ID番号 | : | 01787 |
事件名 | : | 雇用関係存続確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本国有鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 国鉄職員が協議会開催反対運動に参加した際、現地で警察官との衝突があったときに現場の写真をとっていた警部補を見とがめてその腰部をとらえた行為につき公務執行妨害罪で起訴され有罪判決が確定した後に、著しく不都合な行いをなしたとして免職処分とされたのに対してその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 日本国有鉄道法31条1項1号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行 |
裁判年月日 | : | 1974年2月28日 |
裁判所名 | : | 最高一小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (オ) 1196 |
裁判結果 | : | 破棄自判 |
出典 | : | 民集28巻1号66頁/時報733号18頁/タイムズ307号182頁/裁判所時報637号1頁/裁判集民111号197頁 |
審級関係 | : | 控訴審/広島高/昭45. 9.29/昭和45年(ネ)22号 |
評釈論文 | : | 鵜澤秀行・公企労研究19号65頁/角田邦重・労働法律旬報860号12頁/窪田隼人・判例評論187号36頁/青木俊文・経営法曹会議編・最高裁労働判例2巻366頁/白井皓喜・別冊判タ2号240頁/片岡昇・民商法雑誌71巻6号1143頁/籾山錚吾・ジュリスト595号126頁/鈴木康之・ジュリスト561号53頁 |
判決理由 | : | 使用者がその雇傭する従業員に対して課する懲戒は、広く企業秩序を維持確保し、もって企業の円滑な運営を可能ならしめるための一種の制裁罰である。従業員は、雇傭されることによって、企業秩序の維持確保を図るべき義務を負担することになるのは当然のことといわなくてはならない。ところで、企業秩序の維持確保は、通常は、従業員の職場内又は職務遂行に関係のある所為を対象としてこれを規制することにより達成しうるものであるが、必ずしも常に、右の所為のみを対象とするだけで充分であるとすることはできない。すなわち、従業員の職場外でされた職務遂行に関係のない所為であっても、企業秩序に直接の関連を有するものもあり、それが規制の対象となりうることは明らかであるし、また、企業は社会において活動するものであるから、その社会的評価の低下毀損は、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれなしとしないのであって、その評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるがごとき所為については、職場外でされた職務遂行に関係のないものであっても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もありうるといわなければならない。そして、上告人のように極めて高度の公共性を有する公法上の法人であって、公共の利益と密接な関係を有する事業の運営を目的とする企業体においては、その事業の運営内容のみならず、更に広くその事業のあり方自体が社会的な批判の対象とされるのであって、その事業の円滑な運営の確保と並んでその廉潔性の保持が社会から要請ないし期待されているのであるから、このような社会からの評価に即応して、その企業体の一員である上告人の職員の職場外における職務遂行に関係のない所為に対しても、一般私企業の従業員と比較して、より広い、かつ、より厳しい規制がなされうる合理的な理由があるものと考えられるのである。 本件につきこれを見るに、原審確定の本件所為は、職場外でされた職務遂行に関係のないものではあるが、公務執行中の警察官に対し暴行を加えたというものであって、著しく不都合なものと評価しうることは明らかであり、それが上告人の職員の所為として相応しくないもので、上告人の前述の社会的評価を低下毀損するおそれがあると客観的に認めることができるものであるから、国鉄法三一条一項一号及びそれに基づく国鉄就業規則六六条一七号所定の事由に該当するものというべく、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるのである。 |