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ID番号 01816
事件名 懲戒処分取消請求事件
いわゆる事件名 四国財務局事件
争点
事案概要  勤務評定闘争に参加して、勤務時間中に組合の会合や財務局長との会見に出席したり、財務局長が会見を終えて退室しようとするのを妨げたり、勤務状況報告書を当局の意に反して組合側で保管したり、等の一連の非違行為をなしたとして四国財務局職員に対して採られた懲戒処分(懲戒免職)の取消が求められた事例。
参照法条 国家公務員法82条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界
裁判年月日 1977年12月20日
裁判所名 最高三小
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (行ツ) 63 
裁判結果 破棄自判
出典 民集31巻7号1225頁/時報874号23頁/タイムズ357号152頁/訟務月報23巻13号2311頁/裁判所時報730号9頁/労働判例288号45頁/労経速報969号26頁/裁判集民122号529頁
審級関係 控訴審/高松高/昭46.12.13/昭和41年(行コ)8号
評釈論文 玉田勝也・法律のひろば31巻3号19頁/坂本重雄・法律時報50巻4号59頁/宍戸達徳・法曹時報32巻11号1916頁/室井力・昭和52年度重要判例解説〔ジュリスト666号〕45頁/菅野和夫・ジュリスト663号74頁/前田光雄・地方公務員月報174号49頁/東條武治・民商法雑誌79巻4号588頁/林修三・時の法令997号56頁/林修三・時の法令998号53頁
判決理由  ところで、国家公務員につき懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかは、その判断が、懲戒事由に該当すると認められる行為の性質、態様等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、広範な事情を総合してされるべきものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、部下職員の指揮監督の衝にあたる懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきであり、懲戒権者が右の裁量権を行使してした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがって、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである(最高裁昭和四七年(行ツ)第五二号同五二年一二月二〇日第三小法廷判決参照)。
 本件についてこれをみると、原審が確定した右事実関係に徴すれば、被上告人の本件各行為は、昭和三七年度のいわゆる勤務評定反対闘争において、「オールA・公開」等現行法規のもとでは許されない要求を貫徹するため、同年九月下旬から一〇月中旬にかけて十数日間にわたり繰り返して続けられた違法行為であって、これによって四国財務局における職場秩序及び職場の平穏が著しく乱されたものであり、殊に勤務状況報告書の組合保管という行為は、既に係長である第一次評定者において被評定者の人物、能力、適性をはじめとするその勤務状況を記入した極秘の公文書である勤務状況報告書を当局の意思に反し組合側において占有保管するという、悪質なものであり、その違法性が重大なものであること、また、被上告人の右一連の行為のなかには、一〇月五日の局長退出妨害行為のように単なる不謹慎の程度を超え粗暴性を帯びた行為として国公法九九条所定の信用失墜行為にあたるものがあり、更に一〇月一〇日及び一二日の総務課長に対する抗議要求も多数の勢いを借りた粗暴な行為であったこと、が認められ、これら被上告人の行為は、いずれも決して情状が軽いものということはできない。
 以上に判示した被上告人の本件各行為の性質、態様等を考慮すれば、原審の確定した次の諸事実、すなわち、前記勤務状況報告書の組合側保管がかなり切迫した状況のもとでされ、いずれも封をした袋に収めた状態で保管されたこと、右組合側保管は約一日程度のものであり、したがって右報告書の提出遅延も丸一日程度にとどまること、A中央執行委員長に対する懲戒処分が停職三月、B高松支部長に対する懲戒処分が停職九月であることなどの諸事実を勘案しても、本件処分が社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えたものということはできない。