ID番号 | : | 01817 |
事件名 | : | 懲戒処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 神戸税関事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 他の職員になされた懲戒処分に対する抗議行動、勤務時間内の職場集会、繁忙期における怠業、超勤の一せい拒否等の争議行為を行いあるいはこれをあおりそそのかしたこと等を、理由とした税関職員に対する懲戒処分の取消が求められた事例。 |
参照法条 | : | 国家公務員法82条,98条5項 日本国憲法28条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1977年12月20日 |
裁判所名 | : | 最高三小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (行ツ) 52 |
裁判結果 | : | 破棄自判 |
出典 | : | 民集31巻7号1101頁/時報874号3頁/タイムズ357号142頁/訟務月報23巻13号2292頁/裁判所時報730号4頁/労働判例288号24頁/労経速報969号17頁/裁判集民122号471頁 |
審級関係 | : | 控訴審/大阪高/昭47. 2.17/昭和44年(行コ)55号 |
評釈論文 | : | 越山安久・法曹時報33巻2号613頁/岡村周一・民商法雑誌82巻1号82頁/外尾健一・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕27頁/玉田勝也・法律のひろば31巻3号19頁/佐藤昭夫・判例評論237号45頁/坂本重雄・法律時報50巻4号59頁/室井力・昭和52年度重要判例解説〔ジュリスト666号〕45頁/菅野和夫・ジュリスト663号74頁/清水敏・季刊労働法108号124頁/前田光雄・地方公務員月報174号49頁/辻秀典・日本労働法学会誌52号109頁/藤原淳一郎・行政判例百選【1】〔別冊ジュリスト61号〕184頁/萩原博司・公務員関係判例研究19号19頁/判例研究会・警察時報33巻4号125頁/林修三・時の法令997号56頁/林修三・時の法令998号53頁 |
判決理由 | : | 公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。もとより、右の裁量は、恣意にわたることを得ないものであることは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがって、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。 (中 略) なお、国家公務員の争議行為及びそのあおり行為等を禁止する国公法九八条五項の規定が憲法二八条に違反するものではなく、また、公務員の行う争議行為に同法によって違法とされるものとそうでないものとの区別を認めるべきでないことは、当裁判所の判例(昭和四三年(あ)第二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁)とするところであるから、国公法八二条の適用にあたっても、同法九八条五項により禁止される争議行為とそうでないものとの区別を設け、更に、右規定に違反し違法とされる争議行為に違法性の強いものと弱いものとの区別を立てて、右規定違反として同法八二条により懲戒処分をすることができるのはそのうち違法性の強い争議行為に限るものと解すべきでないことは、当然である。したがって、被上告人らに対する本件懲戒処分が裁量権の範囲を超えるかどうかの判断に際して、原判決のように、禁止される争議行為と許される争議行為との限界の判断がむずかしいこと、特に時間内にくい込んだ職場集会の許されるか否かの判断がむずかしいことを考慮に入れるべきでないことは、いうまでもないところである。 前記の被上告人らの本件行為の性質、態様、情状及び被上告人らが日米安保条約反対闘争で昭和三五年六月三度にわたり午前九時三〇分ころまでの勤務時間内職場集会をしたことにより、同年七月被上告人Y1が減給一〇分の一を二か月、同Y2が減給一〇分の一を三か月、同Y3が戒告の各懲戒処分を受けていること等に照らせば、原審が挙げる諸事情を考慮したとしても、本件処分が社会観念上著しく妥当を欠くものとまではいえず、他にこれを認めるに足る事情も見当たらない以上、本件処分が懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えこれを濫用したものと判断することはできないものといわなければならない。これと異なる原審の判断は、ひっきょう、国公法八二条の解釈適用を誤ったものというべきである。 |