ID番号 |
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01823 |
事件名 |
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出勤停止処分無効確認請求控訴事件 |
いわゆる事件名 |
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日本エヌ・シー・アール事件 |
争点 |
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事案概要 |
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使用者の制止にもかかわらず無許可で使用者の所有ないし占有する工場の敷地内でなされた継続的なビラ配布を理由とする出勤停止の無効確認が求められた事例。(一審 請求棄却、二審 控訴棄却、請求棄却) |
参照法条 |
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労働基準法89条1項9号 |
体系項目 |
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懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動 |
裁判年月日 |
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1977年7月14日 |
裁判所名 |
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東京高 |
裁判形式 |
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判決 |
事件番号 |
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昭和48年 (ネ) 304 |
裁判結果 |
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棄却 |
出典 |
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高裁民集30巻3号192頁/労働民例集28巻5・6合併号411頁/時報868号3頁/東高民時報28巻7号160頁/タイムズ364号221頁 |
審級関係 |
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一審/03557/横浜地/昭48. 2. 9/昭和43年(ワ)1895号 |
評釈論文 |
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今野順夫・季刊労働法106号112頁 |
判決理由 |
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一般に事業場は、当然に使用者の管理に属し、労働者は、自己の労働力を使用者に委ねるために事業場の出入りを許され、就業時間中は使用者の指揮命令に従い労務に服する義務を負うものであり、労働組合は労働者が団結によりその経済的地位の向上を図ることを目的として自主的に結成加入した団体であって、使用者から独立した別個の存在である。従って、労働者の労働組合活動は、原則として就業時間外にしかも事業場外においてなすべきであって、労働者が事業場内で労働組合活動をすることは使用者の承認がない限り当然には許されず、この理は労働組合活動が就業時間中の休憩時間に行われても、就業時間外に行われても変りがないと解すべきである。これを本件についてみるのに、《証拠略》によれば、被控訴会社の就業規則には事業場内において業務外の集会を行う場合の許可手続を定め、政治活動を禁止した規定(一二条)、就業時間中に業務外の印刷物を会社の許可なく配布することを禁止した規定(一三条)等のあることは認められるが、一二条はいうまでもなく、一三条も前記原則に照らせば厳格に解すべきであって、就業時間外に事業場内で業務外の印刷物を会社の許可なく配布することを承認した趣旨に解することはできず、前記3の事実から控訴人らのビラ配付が巾狭い通路を集団的に通過する出勤者の多数にビラの受け取りを事実上強制する結果となったこと、すくなくとも一部の従業員が迷惑したことはいずれもこれを推認することができ、使用者の有する事業場の管理権は本来施設を経営目的達成のために管理するものであるから、これに基づく指示命令を施設の物的利用の仕方に関するものに限られると解するのは相当でなく、前記3の控訴人らのビラ配付のように一過的にもせよ被控訴会社従業員の事業所における就労準備を遅らせあるいは事業場の物的施設を汚損する場合にはこれをその目的に副って物的に機能させるため右配付を禁止し得る権能の基礎となると解すべきであり、始業時間を控えての就労準備遅延は就労を遅延させ、そうでなくても受け取ったビラが大磯工場の建物又は敷地内に放置され、その効用を害するから、事業場施設の物的管理の妨害とならないということはできず、控訴人らの所為は懲戒事由に該当するものであって、これに該当しないとの控訴人らの主張は採用の限りではない。 |