ID番号 | : | 01839 |
事件名 | : | 従業員地位保全仮処分申請控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 大洋社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 上司の再三の指示、注意に従わないで職務を怠ったり、大量の業務処理を滞留させて得意先に多大の迷惑をかけ、その結果、会社の信用を失墜させた、等を理由に解雇された労働者が、労働契約上の権利を仮に定めることを求めた事例。(一審 申請認容、二審 原判決取消、申請却下) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1978年3月30日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ネ) 1347 |
裁判結果 | : | 取消 |
出典 | : | 労経速報977号12頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地/昭49. 5.23/昭和46年(ヨ)2360号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 三 そこで、右引用にかかる原判決認定の被控訴人の行為が控訴人会社の就業規則第七四条第一〇号の懲戒解雇事由に該当するか否かについて考えるに、控訴人会社の就業規則(書証略)には、懲戒に関する規定(第七章第二節)があり、懲戒の種類として譴責・減給・出勤停止・諭旨解雇・懲戒解雇の五種を列挙し(第七二条)、原判決末尾添付の別紙のとおり、譴責・減給・出勤停止と諭旨解雇・懲戒解雇とを区別して、それぞれ個別的・具体的な懲戒事由を列挙しているところ、前記事実によれば、被控訴人は昭和四五年三月三日付で販売部雑誌課西部係四国・中国地区担当となってから本件解雇に至るまでの一年余りの間、業務の繁忙その他やむを得ない事由がないのに、A社長、B課長、C係長の再三にわたる職務上の指示、注意に従わないで職務を怠り、大量の業務処理を滞留させ、その結果、関係得意先書店に対して多大の迷惑をかけ、控訴人会社の取引上の信用を失墜させ、控訴人会社に有形・無形の損害(例えばB課長が四国出張所D係長らを同行して四国地区の得意先書店を回ったときの出張旅費の支出により有形の損害を生じたことは明らかである)を与えたものであるから、被控訴人の行為は、その態様、情状に照らし重大かつ悪質であって、就業規則第七四条第三号の「職務上の指示命令に不当に従わず職場の秩序を乱したり又は乱そうとしたとき」に準ずる背信行為というべく、就業規則第七四条第一〇号所定の懲戒解雇事由に該当する。もっとも、控訴人は、本件解雇の通知書には就業規則第七四条第九号を適用して被控訴人を懲戒解雇する旨記載していたものであるが、解雇の際理由を告知することは解雇の要件とは解し難く、解雇の適否を解雇の際明示された解雇理由だけから判断しなければならないとの根拠はなく、解雇当時明示した以外の理由も訴訟上主張することを妨げないものと解するのが相当であるから、控訴人が本件訴訟において解雇通知書に記載されていなかった就業規則第七四条第一〇号の適用を主張することは何等差支えないところである。 (中 略) 五 次に、被控訴人は、本件解雇は権利の濫用であると主張するが、前記認定の事実に照らし本件解雇は権利の濫用であるとは認め難く、他に本件解雇が権利の濫用であると目すべき事情を認めるに足りる疎明はないから、被控訴人の右主張も採用することができない。 六 したがって、本件解雇は有効であるから、被控訴人の本件仮処分申請は、その被保全権利について疎明を欠き、保証を立てさせて疎明に代えることも適当でないので、これを却下すべきものといわなければならない。 |