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ID番号 01841
事件名 懲戒免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 札幌市衛生局事件
争点
事案概要  酒気帯び運転等で逮捕、起訴され罰金判決をうけたことを理由に懲戒免職処分に付された原告が右処分の取消を求めた事例。(認容)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
裁判年月日 1979年12月18日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (行ウ) 12 
裁判結果 (控訴)
出典 労働民例集30巻6号1238頁/時報959号128頁
審級関係 上告審/01892/最高一小/昭57.12. 2/昭和56年(行ツ)20号
評釈論文 佐藤英善・法と政策7号98頁
判決理由  3 地方公務員につき、地公法に定められた懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、地公法は具体的基準を設けていないから、懲戒権者の裁量に任されており、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合に限り違法であると解される(最高裁昭和五二年一二月二〇日第三小法廷判決民集三一巻七号一一〇一頁参照)。
 4 そこで本件処分について検討すると、前記当事者間に争いない事実及び認定事実によれば、飲酒運転は道路交通法違反行為の中でも特に危険悪質な行為とされており、また本件では約四カ月前に原告と同じ札幌東清掃事務所に所属する職員が飲酒運転により業務上過失傷害事件を起して懲戒免職処分になっており、その後約三〇回にわたる交通事故防止の指導と飲酒運転をすれば懲戒免職にする旨の警告を受けているもので、それにもかかわらずあえて飲酒運転をした原告の行為は、決して軽微な非行ということはできない。しかしながら、右行為は純然たる私生活上の非行であるうえ、原告には前科はなく、道路交通法違反(飲酒運転はない)で反則金を三回納付した前歴があるにすぎないこと、本件事故は刑事制裁としては略式命令による罰金刑ですんでいること、立木に車を衝突させはしたが、自己も含めて人身事故とはならなかったこと、逮捕後一貫して改悛の情が認められること、原告は、札幌市衛生局清掃部に所属する単純労務に従事する職員であり、他の一般職員に比して、札幌市民の札幌市職員に対する信頼を裏切った程度は低いと考えられること、過去三年間道内においても、本件のように人身事故に至らず罰金刑で終わった飲酒運転の事例について懲戒免職処分をした例は、警察官を除けば、見当らないこと、その他前記判示にかかる本件諸般の事情を総合すると、本件処分は、原告の行為に対するものとしては著しく重く、原告の行為は、免職処分によらねば、他に札幌市における公務員関係の秩序の維持を図る適当な方法がないほど重大な非行とは認められず、本件について免職処分を選択したことは他の処分例と比較しても権衡を失するから本件処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したものと認められる。