ID番号 | : | 01842 |
事件名 | : | 不当処分無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三菱重工事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「安保反対・侵略兵器製造抗議」を目的としたストライキを企画・指導した組合役員に対する出勤停止(懲戒)処分につき、右ストライキは憲法二八条の保障する正当な争議行為であり、又組合活動を理由として個人的懲戒責任を問うのは不当労働行為である等として、右処分の無効の確認を求めた事例。(棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民事訴訟法(平成8年改正前)225条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 懲戒・懲戒解雇 / 処分無効確認の訴え等 |
裁判年月日 | : | 1979年1月24日 |
裁判所名 | : | 広島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ワ) 965 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報929号129頁/労働判例314号52頁/労経速報1010号20頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―違法争議行為・組合活動〕 原告らは、組合幹部なるが故に原告ら個人が当然にA分会(団体)の行った本件ストライキにつき懲戒責任を負うべき根拠はない旨主張するところ、個々の組合員が組合としての争議行為に入ると、いわゆる集団的労働関係が生ずるが、その場合においても、個別的労働関係が解消されるわけではなく、当該争議行為が違法であり、かつ右争議行為について組合員個人の責任が認められる場合には、なおそのことを理由として、組合員に対して個別的労働関係上の責任を追及し、違法な争議行為を構成した組合員の個々の行動につき、就業規則の懲戒規定(注 原告らの行為は、少なくとも同規則六四条一項五号「正当な理由なしに業務命令もしくは上長の指示に反抗し、または職場の秩序をみだしたとき」、同六三条三号「正当な理由なしに労働時間中みだりに職場を離れたとき」に各該当するものとして懲戒の対象となると言わねばならない。) (中 略) を適用することは差支えなく、しかも前記各認定事実によれば、本件において、原告らは、A分会の役員であることから直ちに懲戒責任を問われたものではなく、同分会の執行委員長、および書記長として、率先して本件ストライキを企画、指導、指揮し、自ら実行した所為が他の組合員に比較して情が重いということを理由として、本件懲戒責任を問われたこと明白である。してみると、本件懲戒処分は、A分会の違法な争議行為につき、原告ら個人が果した行為に具体的に着目してその責任を追及してなされたものであり、かつ、右処分につき被告会社が原告ら二名を差別的に取扱う意思を有していたものと認めるべき証拠もないから、この点に関する原告らの主張は失当である。 〔懲戒・懲戒解雇―処分無効確認の訴え等〕 原告らの求める本件各懲戒処分(出勤停止処分)の無効確認の訴は外形的には過去の法律関係の存否の確認を求めるものであるけれども、現在の権利または法律関係の個別的な確定が必ずしも紛争の抜本的解決をもたらさず、かえって、それらの権利または法律関係の基礎にある過去の基本的な法律関係を確定することが、現に存する紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合には、過去の法律関係の存否の確認を求める訴であっても確認の利益があると解すべきところ、《証拠略》を総合すれば、原告らは、本件出勤停止処分により、出勤停止期間中賃金の支給を受け得なかったのはもちろん、一年後の昇給期における昇給額が一般より減額されていること、そのため爾後の給与、賞与等にも不利益な影響を受けたこと、さらに、被告会社は人事体系に職群等級制度を採用し等級間で給与に差を設けているが、原告らは本件出勤停止処分を受けたことによって進級につき不利益を蒙ったことがそれぞれ認められるから、原告らは、右のような不利益を免れるため、本件出勤停止処分が無効であること(裏をかえせば、かような懲戒処分を受けていない従業員としての地位)の確認を求めるにつき法律上の利益を有するものと解すべきである。 |