全 情 報

ID番号 01845
事件名 違法天引金返還請求事件
いわゆる事件名 富岡営林署事件
争点
事案概要  全林野労働組合員に対する減給処分につき、同人らは国家公務員ではあるが国家公務員法の適用は受けることはなく、労働基準法九一条が規定する減給額の制限を超える部分は無効であるとして、その返還を求めた事例。(棄却)
参照法条 労働基準法89条1項9号
国家公務員法74条,82条,83条,84条,85条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の根拠
裁判年月日 1979年3月22日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (行ウ) 237 
裁判結果 (確定)
出典 労働民例集30巻2号457頁/時報938号116頁/タイムズ394号133頁/タイムズ397号126頁/労働判例316号24頁/訟務月報25巻7号1867頁
審級関係
評釈論文 佐藤昭夫・判例評論255号49頁/中村博・法令解説資料総覧14号161頁
判決理由  現業庁の職員に対する懲戒の関係において見るに、労基法は広く事業に使用される労働者を保護するために最低限度の労働条件等を規定した一般法であり、他方、国公法は、その対象を国民全体の奉仕者である公務員に限定し、公務員に適用すべき各般の根本基準を確立し、公務員がその職務遂行に当り、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で選択され、且つ指導されるべきことを定め、もって国民に対し公務の民主的且つ能率的な運営を保障する目的で制定されたものである。私企業における懲戒制度の目的は、主として職場規律ないし企業秩序の維持にあり、しかも労基法は、同法八九条一項九号の規定で懲戒の種類、事由、程度が就業規則において定められることを予定しているため、同法九一条の規定において減給の程度について制限しているにすぎないが、公務員関係における懲戒制度は、その地位の特殊性から、公務員に対し、信用失墜行為の禁止、政治的行為の制限、私企業からの隔離、他事業等への関与禁止等種々の服務義務を課すとともに、国公法八二条の規定において、免職、停職、減給、戒告の制度を定め、さらに、規則一二―〇で公務員の懲戒について詳細に規定し、公務員秩序維持の観点から厳格な態度で臨んでいるものであり、公務員関係の懲戒制度は私企業のそれとは本質的に異るものであって、それ自体が公務員制度と密接不可分の関係にあるというべきであるのみならず、公労法四〇条一項も、前記のように人事院の懲戒権限に関する国公法八四条二項の規定は、現業庁の職員に適用しない旨規定するが、一般職の国家公務員の懲戒に関する同法七四条、八二条、八三条、八四条一項及び八五条の各規定の適用は排除していないのであるから、これらの規定は、すべて当然現業庁の職員にも適用されるのであるし、しかも、国公法七四条一項は「すべての職員の分限、懲戒及び保障については、公正でなければならない。」とし、同条二項で「前項に関する根本基準の実施につき必要な事項は、この法律に定めるものを除いては、人事院規則でこれを定める。」と規定し、懲戒の具体的基準について規則に委任することを明言し、右委任に基づいて規則一二―〇が制定されているところ、同規則三条は「減給は、一年以下の期間、俸給の月額の五分の一以下に相当する額を、給与から減ずるものとする。」旨定めているのであって減給について、右のごとく国公法七四条二項の規定の委任に基づいて規則一二―〇・三条の規定で定められている以上原告らが主張するように、この関係において労基法九一条の規定の適用される余地はない。