ID番号 | : | 01850 |
事件名 | : | 懲戒免職処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 東北地方建設局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 使用者のなした懲戒免職処分につき、右処分は、組合活動に従事することを欠勤事由としないとの労働慣行が存在することを理由に、処分理由のない違法なものである等として、その取消を求めた控訴事件。 |
参照法条 | : | 国家公務員法82条,98条1項,101条1項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1979年6月5日 |
裁判所名 | : | 仙台高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (行コ) 3 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報946号114頁/労働判例325号25頁/訟務月報25巻11号2800頁 |
審級関係 | : | 一審/仙台地/昭50. 6.25/昭和43年(行ウ)6号 |
評釈論文 | : | 山口三夫・法律のひろば33巻1号75頁 |
判決理由 | : | 仮に、控訴人のいうような勤務時間中における組合活動の自由の慣行が職場で行われていたとしても、その効力を認めることができないことはいうまでもないところである。これを事実たる慣習として当事者を拘束するものとみることはできない。このような慣行はヤミ慣行というべきものであって、事実上まかり通ってきただけのことで、許されないものであることは明らかであるから、たとえ、このような活動が相当期間継続したからといって、正当な慣行として定着する筋合いのものではないというべきである。せいぜいのところ使用者においてこのような職員の活動についてこれまで慣行として通ってきたため、これについて問責権を放棄するという効果をもつにすぎないものというべきである。 このような違法な慣行は、使用者側においていつでも将来にわたって変更することができることはいうまでもないところであるし、その変更する手続についても使用者側において合理的な期間をおいて通告をすれば廃止することができるものと解するのが相当である。 以上のとおり、控訴人が合計五一〇時間を欠勤し、上司から口頭または文書をもって再三再四職務に従事せよとの注意または命令が出されたにもかかわらず、これに従わなかったことは、国家公務員法一〇一条一項、九八条一項に違反し、同法八二条一号および二号の懲戒事由に該当するものといわなければならない。 ところで、国家公務員に懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかは、懲戒権者の裁量に任せられているものと解すべきであるから、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められるものでない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないことは、既に最高裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和五二年一二月二〇日第三小法廷判決、民集三一巻七号一一〇一頁)。 これを本件についてみるに、以上に認定した控訴人の行為の態様等諸般の事情を考慮すれば、本件懲戒免職処分が社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えたものということはできない。控訴人の行為は決して情状が軽いものということができないし、控訴人がこのように欠勤を繰り返したことは、全体の奉仕者としての自覚と責任の欠如を示すものとみられても、やむをえないところである。 |