ID番号 | : | 01851 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 愛知車輛興業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 使用者のなした懲戒解雇及び予備的になした普通解雇につき、右懲戒解雇の根拠となる就業規則は存在しない等として、従業員としての地位の保全を求めた仮処分事件。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号,20条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の根拠 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係 |
裁判年月日 | : | 1979年6月13日 |
裁判所名 | : | 長野地松本支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ヨ) 57 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例329号53頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒権の根拠〕 会社松本営業所においては当初疎乙八号証の二の就業規則が施行され、その後右就業規則が改正されて施行されてきたものと推認するのが相当である。 従って債務者主張のように松本営業所に疎乙一号証(同一四号証の二)の就業規則(乙)が施行されていたとは疎明されないものといわなければならない。 (中 略) 債務者は疎乙一号証(同一四号証の二)の就業規則(乙)(これが一体の就業規則として存在したか否かについても前述のとおり疑問がある)によって債権者を解雇したことは明らかであるところ、その根拠となる疎乙一号証(同一四号証の二)の就業規則(乙)が松本営業所において施行されていたとの疎明に欠ける結果、債務者の本件解雇はその限りにおいて就業規則に基づかない違法なものと言わざるを得ない。 しかしながら松本営業所において、施行されていたと一応推認される疎乙八号証の二の就業規則の懲戒規定と前記疎乙一号証の就業規則の懲戒規定とはその実体的・手続的要件全てが全く同一であることが認められる。 ところで、当初懲戒処分に適用すべき就業規則を誤ったとしても、それによって直ちに当該懲戒処分を無効とすべきではなく、当該懲戒処分の原因である事実に本来適用すべきであった就業規則を適用して尚元の懲戒処分が肯定される場合には、当該懲戒処分を有効なものと判断して差し支えないものと考えられる。 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒解雇の普通解雇への転換〕 普通解雇(単なる労働契約の将来に向けての解約)と懲戒解雇とはその制度の存在目的が全く異質のものであり、手続も異るから、懲戒解雇と普通解雇の転換を安易に認めることは時によっては違法な懲戒解雇を糊塗するための手段に普通解雇が利用され、安易な懲戒解雇が増大し、労働者の地位の不安定を招来する結果に至るから、一方で懲戒解雇を主張し、他方で予備的に普通解雇を主張する場合には、その普通解雇には懲戒解雇事由の存在が必要と解するのが相当である。ところで債権者に懲戒解雇事由の存在が疎明されないこと前述のとおりであるから債務者がなした本件普通解雇の意思表示も無効である。 |