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ID番号 01861
事件名 懲戒免職処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 札幌市事件
争点
事案概要  市長がなした懲戒免職処分につき、裁量権の濫用であるとした原判決の取消を求めた控訴事件。
参照法条 地方公務員法29条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
裁判年月日 1980年10月29日
裁判所名 札幌高
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (行コ) 10 
裁判結果 棄却(上告)
出典 労働民例集31巻5号1129頁
審級関係 上告審/01892/最高一小/昭57.12. 2/昭和56年(行ツ)20号
評釈論文
判決理由  〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―職務外非行〕
 (二)しかしながら、前記のとおり、(1)原告の行為は純然たる私生活上の非行であり、(2)幸いにして人身事故、その他他人に被害を及ぼす結果を生じておらず、(3)原告は逮捕されて以来一貫して改悛の情を示しており、(4)原告には前科はなく、道路交通法違反の反則行為三回の前歴があるだけで、本件事故については、略式命令による罰金刑ですみ、また分限、懲戒処分を受けた前歴もない。
 (三)(1)前記のとおり、原告は札幌市衛生局清掃部に所属して、単純な労務に従事していた者であることからすれば、公務員であるとはいっても、通常の一般市民に比して特に高度の倫理性の保持を要求、期待される者ではないということができるから、原告の行為によって、札幌市職員の名誉、信用が毀損された程度は、さほど著しいものではなかったと考えるのが相当である。
 (2)前記のとおり、地方公務員に対する懲戒処分を行うときに、如何なる懲戒処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されており、したがって、各地方公共団体における職員の職務遂行秩序の維持に関する方針の相異に基づいて、各地方公共団体における懲戒処分の実施についての基準(地公法は具体的基準を定めていないが、懲戒処分は当該地方公共団体の職員については、公平に行わなければならないから、各地方公共団体は懲戒についての具体的基準を定めておくべきであるということができる)に差異が生じることは、何ら異とするに足りないけれども、各地方公共団体における懲戒処分の実情は、斉しく地公法による身分保障を受ける地方公務員に対する懲戒処分の妥当性についての社会観念を推知するうえで、軽視できないものということができるところ、原告の行為前の約三年間、道内においては、人身事故を起こさず、罰金刑に処せられた飲酒運転の行為に因って、懲戒免職処分をした例は、警察官に対するものを除いては、見当らないことは前記のとおりである。
 (四)右(二)、(三)に述べた諸点並びに懲戒処分は職務遂行秩序の維持を主たる目的とするものであること及び免職処分と他の懲戒処分との間には、被処分者が受ける不利益に隔絶的な著しい差異があることを総合して考えると、前記のとおり、原告には住居手当の受給について不正があったことを併せ考えても、原告に対する本件処分は、社会観念上甚しく重きに過ぎて、著しく妥当を欠くものであって、裁量権を濫用したものと認めるのが相当である。