ID番号 | : | 01876 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 国際興業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 観光バスの運転手が、親睦会が行っている慰安旅行の宴会の席上で同僚と喧嘩したことを理由として懲戒解雇されたことにつき、地位保全の仮処分を申し立てた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害 |
裁判年月日 | : | 1981年3月25日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和56年 (ヨ) 77 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労経速報1088号14頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 債務者会社は、債権者についてはAとの間で就業規則六四条一二、一七、二〇、二一の各号所定の懲戒解雇事由が存在し、本件解雇はこれらの規定に基づくものである旨主張するところ、疎明によれば、懲戒解雇事由を定める右就業規則六四条一二号は「他人に暴言、暴行、脅迫を加え又は他人を煽動、教唆して職務の執行を妨害したとき」(以下「一二号」という。他の懲戒解雇事由についても同様にいう)、一七号は「会社の名誉又は信用を傷つけるような行為をしたとき」、二〇号は「数回懲戒処分を受けるもなお改悛の見込がないとき」、二一号は「その他前各号に準ずる不都合な行為があったとき」とそれぞれ規定していることが一応認められる。 (中 略) 一二号が「職務の執行を妨害」したことを要件とすることは、その文言上明らかであるところ、本件解雇の対象たる債権者の行為は、職務の執行とはなんら関係のない親睦会の旅行中に、同じくこれに参加した同僚に対して行われたものであるから、これが同号に該当しないことは明らかである。債権者やAらが、前記傷害事件について債務者会社から事情聴取を受けるなどしたために就労できないことがあったとしても、これをもって職務執行妨害行為といえないことは、同号に徴し明白である。 (中 略) 債務者会社においては、神戸営業所従業員で組織する国際興業神戸労働組合(債権者もその組合員である)との間に人事賞罰委員会規定(以下「規定」という)を定め、これに基づいて組合員たる従業員の懲戒処分等が行われているところ、規定は懲戒処分等の審議機関として労使双方の委員で構成する人事賞罰委員会(以下「委員会」という)を設置する旨定め、(中 略)。 昭和四八年二月、「暴力行為については事由の如何にかかわらず懲戒解雇により厳重処分を行う」旨の確認をし、従業員に対しその旨告示したことが一応認められる。しかしながら、職務執行の妨害を伴わない暴力行為等を懲戒解雇の対象とすることは、規定一四条一二号とは異なる新たな懲戒解雇事由を定めるものといわなければならないが、このような権限は、規定上委員会に付与されていないというべきである。仮に、委員会に右の権限が付与され、職務執行の妨害に当らない暴力行為についても懲戒解雇しうるものとしても、債権者のAに対する暴行の態様、程度は軽微なものであり、これについて債権者は刑罰を受けていないだけでなく、警察の取調べさえ受けていない程度のものであること(この点は債権者の審尋の結果により一応認められる)から考えれば、債権者のAに対する行為は、債務者会社の企業秩序維持のために債権者を社外に放逐すべき程のものとは認め難く、したがって、本件解雇は、妥当な処分の程度を超えるものとして、懲戒権の濫用に当るものといわざるをえない。 |