ID番号 | : | 01909 |
事件名 | : | 懲戒処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 全林野秋田地本事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 下請、臨時的雇用に対する直営直用の拡大、雇用期間の延長等の組合要求に対する林野庁の提案を不満としてなされた四時間ストを理由に停職、減給等の懲戒処分を受けた林野庁職員らが、右処分の取消を求めた事例。(請求認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 国家公務員法82条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1984年1月30日 |
裁判所名 | : | 仙台高秋田支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (行コ) 1 |
裁判結果 | : | 取消 |
出典 | : | 労働判例428号48頁/訟務月報30巻12号2586頁 |
審級関係 | : | 一審/秋田地/昭51. 9.24/昭和46年(行ウ)8号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 右(二)の認定事実によると二確認および議事録抄No.3などで約束された雇用安定、常勤性付与、処遇改善が全林野の要求どおりには具体化あるいは実施されてはいないけれども、林野庁当局において本件ストライキに至るまでの間右二確認等の具体化、実施を故意に怠り引き延ばしてきたとは認められないから、本件ストライキが全林野としてやむにやまれぬもので非難を受けるべきものでないとの被控訴人らの主張は採用し難い。 最高裁判所昭和三九年(あ)第二九六号事件同四一年一〇月二六日大法廷判決、同昭和四一年(あ)第四〇一号事件同四四年四月二日大法廷判決、同昭和四一年(あ)第一一二九号事件同四四年四月二日大法廷判決は、「労働基本権の制限はその職務の停廃が国民生活に重大な支障をもたらすおそれがあるものについてこれをさけるため必要やむを得ない場合に限られるべきである、労働基本権の制限違反に伴う法律効果は必要な限度をこえないように十分配慮されるべきで、とくに勤労者の争議行為等に対して刑事制裁を科することは必要やむを得ない場合に限られるべきである」旨の見解を示しているが、右判決はいずれも刑事事件に関するものでありかつ右見解に対する反対意見や意見が付されていることに照らすと、本件ストライキ当日、右判決の見解が官公労働者の争議行為に対する懲戒処分について適用されるとの確信をもたらす状態に至っていたとまではいえないから、右判決で前記見解が示されたことを理由に被控訴人ら全林野労働者が違法性の認識なく本件ストライキに及んだものとしても、これをもって非難可能性がないということはできず、この点に関する被控訴人らの主張は採用できない。 本件懲戒処分がその職場にあって部下の指揮監督に当る者とは異なる者によって、職場の具体的秩序維持とは異なる観点から政治的労務政策として、無差別一律になされたとの被控訴人らの主張事実はこれを認めるに足りる証拠はないし、また、本件懲戒処分前の事情としてストライキの単純参加者は懲戒処分をされたことがなく、なされたとしても戒告処分が普通であったことを認めるに足りる証拠はない。 (中 略) 本件ストライキにより国民生活や国有林野事業にいかなる影響が生じたかは明らかではないが、国有林野事業が、計画的統一的にその業務を遂行していることおよび本件ストライキが全国的規模で行われていることを併せ考えると、本件ストライキの右事業に対する影響が全くなかったものとも断じ難いところである。 以上みてきた本件ストライキに至るまでの経緯、その規模、別紙当事者目録被控訴人番号1ないし8の被控訴人らの各役割、被控訴人らの処分歴等を総合すると、右ストライキの目的、右ストライキが何ら暴力等を伴っていない点を考慮してもなお被控訴人らに対する本件各懲戒処分は、いずれも社会通念上著しく妥当を欠くものとまではいえず、控訴人らが処分権者としての裁量権を濫用したとは認め難いので、従って被控訴人らの懲戒権濫用の主張も採用できない。 |