判決理由 |
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従業員に対する懲戒権は、もともと経営権の内容に属するものであり、その決定権は経営者にあるわけであるが、それにもかかわらず、被控訴会社がみずから定めた就業規則に、懲戒権の行使について前記のような懲戒委員会の議決、組合の同意を必要とする旨の自己制限を科したゆえんは、従業員の身分に重大な影響を及ぼす懲戒権の行使について、会社の独断専行を避け、組合側と協議してその意見を充分に会社側に反映させることによって組合側の意見を尊重するとともに、他面、会社の趣旨とするところを組合側にも了解せしめ、できる限り両者の相互の理解と納得のうえに事を運ばせようとする趣旨であると解するのが相当である。従って、就業規則の右制限規定は、いかなる場合においても会社の単独決定を許さずこれに従わないでなされた懲戒権の行使を常に無効ならしめるものと解することはできないのであって、当該懲戒権の行使が会社にとって必要やむを得ないものであり、かつ、これについて懲戒委員会の議を経、組合の同意を得るために、会社として尽すべき措置を講じたにもかかわらず、組合側が正当として是認すべき事情もないのに、懲戒委員会に出席してその協議に加わることを拒否し、従って組合の同意を得ることができなかったような場合に■■会社が組合側の関与なしに一方的に懲戒権を行使することを妨げるものではないと解するのが相当である。 |