ID番号 | : | 01972 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 国際自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 乗車拒否等の不祥事を惹起せしめたとして解雇されたタクシー運転手が、右解雇は就業規則所定の懲戒委員会の手続を経ずになされた無効のものであるとして地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(控訴棄却、労働者敗訴) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 1969年2月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ヨ) 2133 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労経速報684号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 懲戒手続において労働組合の関与を認めるのは会社の恣意、独断を防ぎ、組合員の正当な利益を擁護するためのものではあるが、組合の手続関与の程度、態様は各場合により強弱多様の形態があり、組合の同意又はこれとの協議決定を必要とするとのように強く右の趣旨を貫かんとするものから、単に組合の意見を聴くにとどめるという消極的なものも見受けられる。従ってそれらの手続が処分の有効条件をなすかどうかの評価においては、これをすべて一様に決すべきではなく、その手続の重要度に応じて検討すべきである。 (中 略) 被控訴人において懲戒処分を行うには、労使双方により構成される懲戒委員会への諮問、すなわちその意見を聴取するということにとどめていることは明らかである。もとより就業規則は会社の一方的な自立規範ではあるが、ひとたびそれが定立されたときは労使双方を拘束することは労働協約に基づく場合と何んら変りはない。しかしその規定する手続が単なる諮問である以上、これに基づく懲戒委員会の答申そのものには被控訴人は拘束されるものではなく自己の判断に基づき処分することができるのであるから、その点において、処分される組合員にとりその利益擁護の手続的保障は他の場合と比較し軽度のものといわざるをえない。 (中 略) 懲戒委員会に付議されても、必ずしも本人等の意見弁解を聴くことが保障されているわけではないから、この面からも本人の利益保護上さほど重視すべきものということもできない。そして懲戒処分事由については前記就業規則においてそれぞれの懲戒処分の種類に応じて詳細にその基準が示されており、また他方原審証人A、同Bならびに原審および当審証人Cの各証言によれば、組合側においては、従来から就業規則による懲戒委員会の開催に関心が薄く、懲戒該当事件が発生したときも被控訴人からの申入れに対しこれを聞かなくてもよいとして団体交渉等の形で話し合ってきたことおよび本件解雇に当っても従前の事例と同様に被控訴人から予じめ組合にこれを通告し討議していることが疎明され、当審における控訴人本人の供述によるとこれを動かすに足りない。従って、以上の諸点を勘案すると、本件において被控訴人が自ら定めた就業規則に違反して懲戒委員会への諮問手続を経なかったことは非難に値することではあるが、しかしこれがため直ちに本件諭旨解雇が無効となるものと解すべきではないといわなければならない。 |