ID番号 | : | 01974 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 大沢製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 設計業務に従事していた従業員が、会社の更生手続中に、営業業務を主とする営業開発グループへの配転命令を拒否したことを理由として、就業規則に基づいて懲戒解雇されたので、従業員としての地位保全、賃金支払の仮処分を申請した事例。(申請認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 1976年9月16日 |
裁判所名 | : | 横浜地川崎支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (ヨ) 236 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例262号39頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | (証拠略)によれば、従業員に対する賞罰はその公平を期するため部課長をもって構成する賞罰委員会の議を経なければならないものとされていることが明らかであるところ、本件懲戒解雇につき右賞罰委員会の決議を経ていないことは当事者間に争いがないから本件解雇処分には手続上の瑕疵が存するものといわなければならない。そこで右処分の効力について検討するに、前記証拠によれば右賞罰委員会は、単なる諮問機関ではなく意思決定機関であって、懲戒事由の存否の認定、懲戒の程度方法等について現場職制の意見を反映させることにより、会社の恣意独断を防止し、もって賞罰の公平を期するために設けられたものであることが明らかであるから、かかる決定機関の決議を経ていない懲戒、ことに従業員たる身分を失わしめる懲戒解雇は、特段の事情のない限り、その手続に重大な瑕疵があるものとして無効と解する外はない。 そこで、本件懲戒解雇は会社更生計画実施のため緊急の必要から賞罰委員会に代わるものとして昭和五〇年一〇月三〇日に開催された会議(出席者管財人、同代理各一名、取締役二名、生産管理部長一名)において決定されたものであるから本件解雇には手続上の瑕疵はなく有効であるとの被申請人の主張につき検討するに、会社につき昭和五〇年九月二九日更生計画が認可されたことは申請人の明らかに争わないところであるからこれを自白したものとみなす。しかし、右会議の開催された同年一〇月三〇日当時就業規則上賞罰委員会の構成員となるべき部課長の総数は約一五、六名であったことは当事者間に争いがないところ、その招集権者である管財人が前記賞罰委員会を招集開催することが不可能であったことの疎明は何もない。しかも、管財人、同代理各一名、取締役二名、生産管理部長一名、以上合計五名で構成された被申請人主張の右会議の構成、権限どのような根拠に基づくか不明であるのみならず、その構成員の殆んど全部が現場職制以外の者で占められている右会議をもって賞罰委員会に代えることは、現場職制の意見を十分反映させることにより会社の恣意、独断を防止しもって賞罰の公平をはかるという前記賞罰委員会設置の趣旨に明らかに反するものとして到底許されるべくもないものといわなければならない。したがって本件懲戒解雇はその手続面において重大な瑕疵があり、懲戒事由の存否とかかわりなく無効であるといわなければならない。 |