全 情 報

ID番号 03001
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 国鉄梅小路駅事件
争点
事案概要  勤務割が変更され徹夜勤務を命ぜられた国鉄職員がこれを拒否したため停職処分(六月)に付したことにつき、生活設計等を配慮しておらず、勤務変更の要件を著しく欠いており無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1987年1月9日
裁判所名 京都地
裁判形式 決定
事件番号 昭和61年 (ヨ) 1140 
裁判結果 認容
出典 労働判例489号16頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 二 本件疎明資料を総合すれば、申請人X1は、昭和六一年七月一二日午後三時ころA助役から自宅に電話を受けその際同助役から翌日の日勤を一昼夜交代の徹夜勤務に変更できないかとの打診を受けたものの、昨日は徹夜勤務であったうえ、同月一四日も勤務予定上徹夜勤務であり、一三日と一四日の徹夜勤務が重なるため断ったこと、その後電話の発信者がA助役からB助役に代り同助役から再度一三日の徹夜勤務を依頼されたものの、一三日夜は九月一五日に内定していた結婚式の打合わせのため婚約者の家に行くという私的な用務も存したため再度右用件を同助役に告げることもなく断ったこと、申請人X1は、同年七月一三日朝日勤の予定で出勤したところ、勤務先の西部運転詰所において申請人X2が勤務変更の件でC助役に抗議していたため自己の勤務体制が心配となり同日夜の勤務予定表を見たところ、何ら承諾したことはないのに一昼夜交代の徹夜勤務体制で勤務予定表の記載がなされていることを知ったこと、他方申請人X2は、同年七月一二日午後一一時前ころC助役から自宅に電話を受け、その際翌日の勤務について予定されていた日勤から徹夜で切り方の勤務につくとの勤務変更の打診を受けたが、切り方の勤務については昭和五九年二月のダイヤ改正の際切り方から職制上一段階下の空気制動方に戻されており二年余りも切り方の勤務に従事していないうえ、しかも徹夜勤務ということになると安全に業務を遂行することができるかという点についても不安があり、さらに一三日夜は友人と会う約束も存したため「明日用事もあるし、出来ません」と言って電話を切ったこと、同申請人は、翌一三日午前八時二〇分ころ出勤し西部運転詰所において昨晩の突然の勤務変更の電話につきC助役に抗議している際何気なく机の上に置かれていた勤務予定表を見たところ、右表には自己が一三日の空制の徹夜勤務として記載されていることを知り、右同様の経緯で勤務変更のなされていた申請人X1と共に勤務変更につき抗議していたところ、被申請人の管理者であるC助役から同日午前八時三一分ころ申請人両名に対し勤務予定表通りの勤務に従事せよとの業務命令が発せられたこと、申請人両名は、当初予定されていた日勤終了後退出し、それぞれ私的な要件で外出したこと、被申請人が申請人両名に対し前記業務命令を発したのは、同年七月一〇日D、Eを人材活用センターに配属したためであって、同人らの同センターへの配属により同月一三日夜の徹夜勤務に二名の欠員を生じることは同人らに事前通告のあった同月五日の時点で既に判明していたことであること、ところで、被申請人作成にかかる就業規則細則によれば、勤務予定表は毎月二五日までに翌一箇月分を作成し公表する、勤務は四日前に確定する、勤務確定後已むを得ない場合は、本人の生活設計を十分配慮して勤務の変更を行うことが出来ると規定されているところから、被申請人は、業務命令により本人の承諾がなくても勤務当日の変更も可能ではあるが、かかる場合には管理者において変更されるべき本人の生活設計について充分な配慮が必要であり、この点について検討すると、右C助役の発した申請人両名に対する本件業務命令は、申請人らが如何なる理由で一三日の徹夜勤務を断っているのかを問いただすなどの行為をなしておらず、その拒絶理由の把握を全く欠落しており、さらに、申請人X1が一三日の徹夜勤務に従事すると一四日も連続して徹夜勤務に従事する結果になること、また申請人X2については二年余りも従事していないしかも職制上一段階習熟を要する切り方の徹夜勤務を打診しており、また勤務変更の打診もいずれも前日であって安全面の配慮も充分でないと考えられること、また申請人両名は、梅小路駅西部運転詰所に勤務しているものであるが、同東部運転詰所に勤務しているFらに対しても申請人両名と同様に同月一二日夜間に一三日の日勤を徹夜勤務に変更できないかとの電話での打診があったが、右Fらは断ったところ、翌日の朝の段階では右Fらに依頼した部分の勤務予定表は欠員のままであり、同詰所を管理する室助役等の手配により右Fらには申請人両名と異なり業務命令を発することなく運転主任らが右Fらに依頼していた徹夜勤務に従事して勤務を遂行したことが一応認められる。
 三 ところで、申請人両名に対する本件停職処分は、被申請人が昭和六一年七月一三日午前八時三一分に発した右両名に対する同日の徹夜勤務をも命ずる旨の業務命令を無視して勤務を放棄したことを理由とするものであるが、右被申請人の発した業務命令は、前記二で認定したように、勤務変更の要件である申請人両名の生活設計等を何ら配慮しておらず、勤務変更の要件を著しく欠いているところから無効であり、このため右業務命令違反を理由とする本件停職処分もまた効力を生じないものというべきである。