ID番号 | : | 03005 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 読売日本交響楽団事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 交響楽団のチェロソリストの雇用契約は期間を定めた契約であり、当該雇用契約は期間の満了により終了したものであり、また一年をこえる期間を定めたものではないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法13条 労働基準法14条 民法628条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1987年1月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和61年 (ヨ) 2251 |
裁判結果 | : | 却下(抗告) |
出典 | : | 時報1223号139頁/労経速報1286号23頁/労働判例493号70頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 古川陽二・季刊労働法144号191~193頁1987年7月 |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 二 次に、申請人は、申請人の楽団における地位は一般の楽団員と格別変わるものではなく、労働者として労働基準法の適用を受けるから、同法一四条、一三条により、一年を超える部分の期間の定めは無効となり一年後は期間の定めのない契約となる旨主張する。なるほど、申請人の楽団における地位は、ソロチェリストとしてのものであって一般の楽団員の指導にあたることなど指導的立場にあるとはいえ、拘束時間の定めがあり、被申請人からの出演要請に対して拒否することができない等の点において従属的地位にあるから、労働基準法上の労働者としての地位にあって同法の適用を受けるものというべきである。 そして、労働契約について、一年を超える期間の定めをすることは労働基準法一四条に違反し、その場合には同法一三条により一年を超える部分は無効となり、期間が一年に短縮されるのであり、右一年の期間満了後も労働関係が継続された場合には、民法六二九条一項により期間の定めのない契約として継続されていくものと解するのが相当である。 本件においては、当初期間を二年とする第一契約が締結され、その期間満了の際に再び期間を二年とする第二契約が締結され、更にその期間満了の際に期間を一年とする第三契約が締結されたという事実関係であり、申請人は、右事実関係に前記法理を適用すると、第一契約の期間は一年に短縮され、右期間満了後も労働関係が継続されたことにより第一契約は期間の定めのないものとなり、その後はその状態が継続し、単に報酬額等の定めが改定されたにすぎないと主張しているのである。たしかに期間一年を超える労働契約が締結され、これがその後も漫然と継続されているというような場合には、申請人の主張するように解する余地があるのであるが、本件においては、その後に第二契約及び第三契約が締結されていること、先に認定したように、申請人と被申請人との間においては第一契約の当初からその契約が永続すべきものとして締結されたとの事情はないものであったこと、右の三つの契約においては単に期間についての定めのほかに申請人の職名、年俸、拘束時間、更新意思の通知条項等労働契約の重要な部分についての交渉がされた上で書面によって各契約が締結されているのであって単一の労働契約が継続しているものとは評価し難いこと等を考え合せると、申請人の主張するように、第一契約が期間の定めのないものとなり、その状態が継続しているにすぎないものと解することは相当でなく、第二契約を締結した際に、従前の第一契約(期間については前記のように期間の定めのないものとなったもの)は解消され、第一契約とは異なる内容の契約が新たに締結され、また、第三契約を締結した際にもこれと同様に従前の第二契約(期間については期間の定めのないものとなったもの)は解消され、第二契約とは異なる内容の契約が新たに締結されたものと解するのが相当である。そうであるとすれば、第三契約で定められた一年の期間の満了により、申請人と被申請人との間の労働契約は終了したものということになる。 |