全 情 報

ID番号 03010
事件名 部屋明渡請求事件
いわゆる事件名 千代田火災海上保険事件
争点
事案概要  解雇によって従業員の地位を失ったことを理由とする会社独身寮の部屋の明渡請求がなされたのに対し、解雇理由としてあげられた同僚への暴行に対する始末書提出命令の拒否、およびその後の出社命令拒否につき、右拒否に対する通常解雇には相当の理由があり、解雇権の濫用にはあたらないとされた事例。
 懲戒解雇を相当とする理由が存在する場合、将来を考慮して通常解雇とすることはもとより相当であるとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 始末書不提出
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
解雇(民事) / 解雇事由 / 懲戒解雇事由に基づく普通解雇
寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 被解雇者・退職者の退去義務・退寮処分
裁判年月日 1987年1月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ワ) 11250 
裁判結果 認容
出典 労働判例495号65頁/労経速報1298号19頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-始末書不提出〕
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
〔解雇-解雇事由-懲戒解雇事由に基づく普通解雇〕
〔寄宿舎・社宅-寄宿舎の利用-被解雇者の退去義務・退寮処分〕
 6 以上1から5までに認定した事実によれば、被告が昭和五七年一二月に減給の処分を受けて以降就業規則所定の始末書の提出を拒否したこと、再三にわたる口頭又は書面による出社命令に応じないことは、就業規則一二八条三号の「職務上の指示、命令に不当に反抗し、職場の秩序を乱したとき」に該当し、かつ、その情が重いといわざるを得ないし、また、同条八号の「数回譴責、減給又は出勤停止の処分を受けたにもかかわらず、なお改悛の見込みがないとき」にも該当するということができる。したがって、被告については懲戒解雇を相当とする理由が存在するから、これについて被告の将来を考慮して通常解雇とした原告の措置はもとより相当であって、本件解雇は有効である。被告は、本件解雇は解雇権の濫用であると主張するけれども、前記認定のような本件解雇に至る経緯からすれば、解雇権が濫用されたと認めることは、到底できない。
 三 そうすると、被告は、社宅管理規定に基づき、解雇の日から六か月を経過した昭和五九年二月末日までに本件部屋を明け渡すべき義務があるものといわなければならない。