ID番号 | : | 03071 |
事件名 | : | 従業員地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 昭南タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 売上金の一部未納入・前借に流用、労働能率の低下、不良な勤務態度を理由とするタクシー運転手に対する解雇が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇事由 / 不正行為 |
裁判年月日 | : | 1987年7月15日 |
裁判所名 | : | 徳島地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ヨ) 86 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例502号38頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 〔解雇-解雇事由-不正行為〕 右事実によれば、被申請人会社においては、元来、売上金からの給料の前借は容認されており、限度額の定めがあるものの、その運用は実際上厳格でなく、大体において申請人の前借額はその限度額を著しく越えるものではないし、前借金は給料日に清算され、被申請人会社に実質上損害を与えるものでもなかった。売上金についても、数日後に納入することが認められており、一件記録によれば、申請人が勤務当日に納入しなかった売上金もその後に納入され、被申請人会社に実質上の損失を与えたことはなかったことが一応認められる。これらの事実に照らすと、申請人には給料の前借、売上金の納入等の点で多少ルーズなところがあったにしても、これを被申請人会社の前記のような管理体制と対比するときは、これを理由として申請人を解雇するのはその制裁としては重きに過ぎて合理性を欠くものといわなければならない。 そのほか、被申請人会社の申請人に対する解雇通知には、解雇理由として、労働能率の低下、不良な勤務態度が掲げられているところ、一件記録によれば、申請人の一日当たりの売上高が被申請人会社の従業員の中で最低であることが一応認められるけれども、それとても他の従業員と比べて著しく劣るものではなく、逆に申請人はいわゆる公休出勤、明番出勤に精励して、長期的に見れば、被申請人会社の売上高の向上に貢献しているといえなくもないし、また乗客との紛争が度重なるとかそのほかの勤務態度が不良であると認めるに足りる事情は見当たらない。 したがって、本件解雇は解雇権の濫用であるから無効であり、申請人はいまなお被申請人会社の従業員たる地位を有するものというべきである。 |