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ID番号 03088
事件名 停職処分無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 乙山信用金庫事件
争点
事案概要  金融機関の従業員が組合の分裂に起因して対立組合の預金残高を確認するため事務取扱要領に違反する不正行為であることを知りながら同僚をしてオンライン端末機を無断操作させて預金残高を確認した行為を理由として停職六〇日の懲戒処分に付されたケースでその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1987年9月7日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (モ) 957 
裁判結果 認可
出典 労働判例503号23頁/労経速報1306号17頁
審級関係
評釈論文 永山考二・労働法律旬報1185号69~72頁1988年2月10日/新谷眞人・季刊労働法146号192~193頁1988年1月
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 1 被控訴人の本件行為は、前記認定のとおり同人の所属する組合の預金高を知るため正当な手続を踏まず本店営業部の内情に詳しいAを使って普通預金係が保管している顧客照会カード用紙を盗ませ貸付係Bが席を外した隙に同人管理の端末機を無断で使用させ組合預金の残高を確認したものであって、その行為は、控訴人就業規則第四八条第一号「法令、定款その他この金庫の諸規定に違反したとき。」及び第四号「金融機関の奉仕者たるにふさわしくない非行のあったとき。」に該当する。
(中略)
 3 また、被控訴人の本件行為により控訴人は財産的損害を被ってはいないけれども、端末機の取扱いを巌格にするよう指導を強化した矢先に職員により私的な目的のため端末機が不正に操作されたことは控訴人に少なからざる衝撃を与えたものというべきであって(この事実は《証拠略》から認めることができる。)対社会的信用を重んずる金融機関としては財産的損害に勝るとも劣らない被害を受けたものといっても過言ではない。
 4 しかして《証拠略》によれば、控訴人の就業規則には懲戒処分として、懲戒解雇、停職、減給及び戒告の四種が定められているが、被控訴人の以上に見た非行の態様からすれば、停職六〇日は必ずしも重きに失するとはいえず、《証拠略》によると、本件に関して端末機の管理責任者本店営業部長C及び当該端末機の管理者主事補Bは昭和五九年一一月一九日戒告処分を受けたことが認められる(なお、端末機の不正使用実行者Aは同年一二月一九日懲戒解雇の内示を受けたが、任意退職の申出を受理する形で昭和六〇年一月五日退職したことは前示引用(中略)のとおりである。)こととも対比すると、控訴人が被控訴人に対してした停職六〇日の懲戒処分は、懲戒権者としての自由載量権の範囲を逸脱し甚しく均衡を失し社会通念上合理性を欠くものということはできない。
 本件懲戒処分は懲戒権の濫用に当たらず、また公序良俗にも反しない。