ID番号 | : | 03094 |
事件名 | : | 給料請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 全国農協連合会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 業務上横領の罪で起訴された後、起訴休職処分に付され、第一審は有罪であったが控訴審では無罪となった者が、起訴休職処分は不当であったとして右期間中の賃金を請求した事件。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項9号 民法536条2項 |
体系項目 | : | 休職 / 起訴休職 / 休職制度の効力 休職 / 休職期間中の賃金(休職と賃金) |
裁判年月日 | : | 1987年9月22日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ワ) 7926 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 時報1256号102頁/労働判例503号16頁/労経速報1306号10頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 西村健一郎・法学セミナー33巻3号109頁1988年3月 |
判決理由 | : | 〔休職-休職期間中の賃金(休職と賃金)〕 従業員が刑事事件に関して起訴された場合、それだけで常に労務の提供が不可能になるとは限らないが、起訴事実の内容と当該従業員の地位・担当職務によっては、職務にそのまま従事させることが対外信用、職場秩序の維持の上で支障を生じ、あるいは公判期日への出頭等のため労務提供にも支障を生ずる場合があり、起訴休職は、このような場合に従業員を刑事裁判の確定まで一時的に業務から排除するための制度である。したがって、このような支障がないのに起訴休職が命ぜられたときは、これによる就労不能は、使用者の責に帰すべき事由による履行不能として、従業員は反対給付である賃金請求権を失わないというべきである。 〔休職-起訴休職-休職制度の効力〕 本件起訴にかかる業務上横領被告事件について、第一審においては有罪の判決が言渡されたが、控訴審において無罪判決が言渡され、同判決が確定したことは当事者間に争いがない。原告は無罪判決確定により本件起訴及びこれを前提とする本件休職処分が遡及的に不当となったと主張する。しかし、公訴の提起は、公訴事実について裁判所の審判を求める行為であって、無罪判決が確定したというだけで直ちに公訴の提起が違法不当となると解すべき理由はない。そして起訴休職は、起訴された従業員が有罪となることを前提として休職を命ずるものではなく、起訴されたこと自体を要件として前記のような趣旨、目的の下に事件の係属中暫定的に従業員を業務から解放するものであって、無罪判決が確定しても、休職の終了事由となることは格別、判決確定までの間犯罪の嫌疑が存在したことに変りはないから遡及的に休職を不当ならしめることはないというべきである。 |