ID番号 | : | 03104 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 博多自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 会社の事実上の倒産後、会社の承認のもとで「事業管理委員会」の責任者として会社の経営全般をみてきた組合委員長に対する不正行為を理由とする諭旨解雇につきその効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 |
裁判年月日 | : | 1987年10月28日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和61年 (ヨ) 1068 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例506号31頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 右に認定の経緯の下に労働者が使用者たる企業の経営を掌握し、あるいは掌握しようとすること自体をもってこれを直ちに企業秩序を乱す行為と評価することはできず、従ってこれを懲戒ないし諭旨事由とすることができないのは当然であるから、結局、債務者の言わんとするところは、債権者が債務者の経営につき右のような重大な権限を取得するに際し、私利を図る等の不当な目的を有し、かつ不正な手段を用いたとして、これが就業規則八四条八号(「会社の名義を利用し私利を図る行為があったとき」)又は一二号(「故意又は重大な過失により………会社に損害を与えたとき」)に該当するという点にあるものとみるほかはないところ、本件においてそのような事実を疎明するに足りる証拠は全くない。すなわち、右の賃貸借継続が専らA若しくは債権者の利を図り、又は債務者に損害を与えるものであったとは認め難く(移転した方が現在地に留まるより有利であったという事情も窺うことができない。)、また、右の組合決議及び総会決議にあたり、債権者がことさら欺罔その他不当な手段を弄したとも認められず、寧ろ債務者は、昭和五三年ころには倒産後の経営危機から一応脱していたものの、組合による経営管理の時期を終えていわゆる経営の正常化ができる状態には未だ立ち到っていなかったこと、債権者への運営一任及び代表権についての同意権付与につき、債務者内部にさしたる反対もなかったこと等、本件疎明資料によって認められる事実に照らせば、右一任及び同意権付与は、適正な手続のもとになされたものと推認される。 (中略) 以上の認定によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件諭旨解雇はその理由を欠き、無効であるというほかはないから、当事者間の雇傭関係はいまだ終了していないものというべきである。 |