ID番号 | : | 03130 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 吉本キャビネット事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 電気機器用キャビネットの製造販売会社の従業員がバッフル板切断機の操作中に負った事故につき、会社に安全配慮義務違反があるとして損害賠償請求を認容した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1984年8月6日 |
裁判所名 | : | 浦和地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (ワ) 320 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 時報1136号124頁/タイムズ541号198頁/労働判例446号71頁/労経速報1220号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕 ところで、一般に雇傭契約は労務提供と報酬支払を基本的要素とする双務契約であるが、右雇傭契約に含まれる使用者の義務は単に報酬支払義務に尽きるものではなく、労働者が使用者の指定する場所において、かつ、その提供する設備、機械、器具等を用いて稼働する場合、右設備等から生ずる労働災害全般を防止し、労働者を安全に就労せしむべき安全保証義務をも含むものといわなければならない。このことは、労働基準法、労働安全衛生法その他の労働保護法が、行政的監督と刑事罰をもって使用者に対し、労働災害からの安全保証義務の履行を公法上強制している趣旨からも、肯認することができる。そして、前記認定事実によれば、本件機械に原告主張のような瑕疵があるか否かの判断は別としても、少なくとも本件事故は、被告において原告に対し、本件機械の構造・機能、作動方法は固より、その内包する危険性とこれに対処する措置を原告の身につくまで教示し、又は通常被告がそうしているように助手一名を付していれば(原告が手首を挾まれた時点で、その助手が直ちに本件機械を停止することができたはずであるから)、未然に防止することが可能であったと思料されるのであって、被告がこれらの措置を講じなかったのは、労働災害防止のための安全保証義務に違背するものといわざるを得ない。 被告は、抗弁1のとおりその無過失を主張するけれども、被告がAに対し、原告に本件機械の操作方法、安全のための注意事項、非常停止ボタンの位置及び停止方法等を良く説明するよう指示した旨の事実を認めるに足りる証拠はなく(Aが原告に右のような説明をしたことを認め得る証拠もない。)、かえって、前記認定のとおり、Bが原告に、テーブル上のバッフル板の位置ずれを防止する手段として、その両側を手で押さえることを教えた以外は、被告は、本件機械の操作及び作業方法に関する具体的事項を何ら教示していないものというべきであって、被告の右無過失の主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 したがって、被告は、債務不履行責任に基づき、本件事故により原告が被った損害を賠償すべき責任を負う。 |