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ID番号 03131
事件名 懲戒処分無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 船橋電信電話局事件
争点
事案概要  年次有給休暇中の職員らが、庁舎移転に反対して局構内に乱入し、退去命令に従わないことを理由とする停職処分につき 裁量権の範囲を逸脱しており無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1984年9月13日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ネ) 2446 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働民例集35巻5号507頁/時報1155号299頁/東高民時報35巻8・9合併号156頁/労働判例442号42頁
審級関係 一審/01891/東京地/昭57. 9.17/昭和51年(ワ)292号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 二 右のとおり、被控訴人の共通事務室等局舎内立ち入りと、その立ち入りを前提とした被控訴人の行動に関する控訴人主張の事実はこれを認めがたいが、右引用にかかる原判決認定の事実関係からすれば、線路庁舎移転阻止等を標榜して八月一八日に行われた諸行動(以下「本件阻止行動」という。)のうち、被控訴人の直接関与した行為が少くとも控訴人の就業規則五九条三号、一八号(五条五項、六項、八項違反)、二〇号に該当すること、したがって、被控訴人について控訴人の就業規則の定めによる懲戒事由のあったことは明らかといわなければならない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 果してしからば、かかる重大な非違行為に関する本件事実誤認のもとになされた被控訴人に対する本件停職処分には、控訴人の有する裁量権の範囲を逸脱した違法があり、無効と断ぜざるを得ない。けだし、共通事務室等局舎内の本件阻止行動に参加しなかった被控訴人に対し、それに参加したと誤認してなされた停職六か月という懲戒処分は、局舎外において被控訴人と行動を共にしたほか、共通事務室等局舎内の右行動にも関与した第一審相原告らに対する各懲戒処分、とりわけAを除く第一審相原告らに対する右と同一期間の停職処分と明らかに著しく均衡を失し、ひいては本件阻止行動中の被控訴人が関与した行為に対しても、明らかに著しく均衡を失するものというべきであり、しかも、過去の処分歴、その他懲戒処分の選択にあたり考慮すべき懲戒事由該当の非違行為以外の諸事情についての主張立証はないうえ、記録上認められる本件訴訟の経緯及び弁論の全趣旨によれば、かえって、右諸事情において被控訴人とAを除く他の第一審相原告らとの間にさしたる相違がないことがうかがえるのであって、結局、本件全資料を検討すれば、本件事実誤認に基づいてなされた被控訴人に対する本件停職処分は、信義誠実の原則、衡平の法理に照らして考量しても、著しく合理性を欠くもの、すなわち社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者の裁量権の範囲を超えるものとして是認できないというほかないからである。