ID番号 | : | 03133 |
事件名 | : | 特殊勤務手当請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 福岡市消防局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 継続二四時間、隔日勤務の消防局職員の勤務につき、条例所定の特殊勤務手当の対象とはならないとした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項2号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 特殊勤務手当 |
裁判年月日 | : | 1984年9月26日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (ネ) 135 |
裁判結果 | : | 棄却(上告) |
出典 | : | 行裁例集35巻9号1403頁/時報1142号144頁/タイムズ545号211頁/労働判例444号46頁/判例地方自治10号23頁 |
審級関係 | : | 一審/01167/福岡地/昭56. 2.24/昭和54年(ワ)1329号 |
評釈論文 | : | 中西又三・自治研究63巻1号113頁 |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権の発生-特殊勤務手当〕 本件第一種勤務差手当の支給により考慮されるべき勤務時間の特殊性については、控訴人ら消防吏員はすでに給料面において考慮されているのであるから、本件特勤手当条例三条及び四条の趣旨を前記二の1の(二)のとおり解する以上、控訴人らは第一種勤務差手当の支給対象とならないものというべきである。なお、このことは、前示のように、旧特勤手当条例の当時から控訴人ら消防吏員は第一種勤務差手当の支給対象とされていなかった沿革に徴しても根拠付けられるところである。(第一種勤務差手当の内容は、本件特勤手当条例におけるものと旧特勤手当条例におけるそれとで異なるところはないし、また、右新旧両条例施行の前後を通じ、消防吏員についても他の一般行政職員についても、給料面での取扱いや原則的な勤務形態に特記すべき変動を生じた事実もうかがえない。) 5 右認定、判断に反する控訴人らの主張は、当裁判所の採らないところであるが、なお若干この点について述べる。 まず、控訴人らは、控訴人ら隔日勤務の消防吏員の勤務時間の特殊性が給料で考慮されていたことはないとして、その理由をあげている(控訴人らの補足主張(1)ないし(5))。 しかし、右(1)は、前示給与条例三条(給与法四条も同旨)の規定に照らせば、控訴人らの独自の見解に過ぎないものというべく、採用に値しない。 次に、(2)及び(5)については、なるほど控訴人ら主張のような各法令の改正がなされたのに、これに伴っての被控訴人市の消防職給料表の改廃がなされていないことは弁論の全趣旨によりこれをうかがうことができるけれども、正規の勤務時間数の如何にかかわらず消防吏員の勤務時間には前示(二の2の(二)、(三))のような特殊性が存するもので、しかもその特殊性は右法令の改正によっても実質上の変化はないのであるから、右法令の改正に伴う消防職給料表の改正がなされなかったからといって、直ちに控訴人ら消防吏員の勤務時間の特殊性が給料面で考慮されていないとはいい得ず、控訴人らの主張は理由がない。 次に、(3)については、前示のとおり八〇〇名を超える被控訴人市の消防吏員のうちその七〇ないし七五パーセントに当たる者が隔日勤務者であり、その余が概ね毎日勤務者なのである。そうだとすれば、消防吏員は、その大部分が隔日勤務者であって、その勤務は長時間にわたることを常態とするもの、換言すれば、消防吏員の勤務体制は、総体的に見て、隔日勤務を通常の形態とするものであるということができる。しかも、消防職員勤務規程六条によれば、毎日勤務者であっても、消防吏員であれば、必要に応じ、隔日勤務者と同じように、一週間につき六〇時間の勤務をすることがある。のみならず、前記A証人の証言によれば、消防吏員である以上、毎日勤務と隔日勤務との間の人事交流の要請があることを認めることができる。以上を総合すると、消防吏員に対して、一律に消防職給料表を適用する必要性と妥当性が存するというべきである。そして、前記国家消防庁管理局長通知(乙第九号証)の趣旨に鑑み、消防職給料表においては消防吏員の職務の危険度などの特殊性をも考慮されているとみられることを併せ考えると、消防吏員に対して一律に同給料表が適用されるからといって、隔日勤務者の勤務時間についての特殊性が給料上考慮されていないとすることはできない。 また、(4)については、成立に争いのない乙第六六号証及び弁論の全趣旨を総合すると、看護婦に対して医療職給料表(2)が制定、適用されるに至ったのは、被控訴人市の人事委員会が昭和四九年八月一二日付で、「看護業務の複雑困難化及び要員確保の必要性等の事情を考慮して」所要の措置を講ずるよう勧告した結果であると認められるので、消防職給料表の制定とは趣旨を異にし、医療職給料表(2)は勤務時間の特殊性を給料表化したものではないといわなければならない。従って、医療職給料表(2)の適用を受ける看護婦が第一種勤務差手当の支給を受けたからといって、このことをもって、消防職給料表において消防吏員の勤務時間の特殊性が考慮されていないとすることはできないし、また看護婦と消防吏員との間に不公平を生じるものとも考えられない。 更に、控訴人らは、本件特勤手当条例に定める第三種勤務差手当及び第四種勤務差手当については控訴人ら消防吏員にも適用されているのに、第一種勤務差手当については適用されないとするのは矛盾がある旨主張する。しかし、特勤手当条例に規定されている諸種の特殊勤務手当は、それぞれ別個のものであるから、ある職員につきどの手当が支給されるかは、対象となる手当ごとに別途に考察するのが当然で、消防吏員に第三或いは第四種勤務差手当が支給されるからといって、第一種勤務差手当をこれと同一に考えるべきでないことはいうまでもなく、控訴人らの右主張も採用の限りでない。 |