ID番号 | : | 03135 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本軽金属事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 業務縮少を理由とする新潟工場から静岡工場への配転命令拒否に対する懲戒解雇につき、病気の六九歳の母がおり、右命令は権利濫用にあたり、懲戒解雇も無効とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1984年10月15日 |
裁判所名 | : | 新潟地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和59年 (ヨ) 116 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例446号43頁/労経速報1219号25頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 以上の事実に基づいて判断するに、本件配転命令について業務上の必要が肯認されるとしても、その必要性の程度と本件配転によって債権者が受ける影響の程度を比較衡量して、前者に比し、後者が著しく大きい場合には、本件配転命令は権利の濫用ないし信義則違反として無効となるというべきである。 (三) 会社が従業員に対し配転を命じるに当たって従業員の事情―それには当該従業員本人その者の事情ばかりでなく、その家族の事情も相当な範囲で含まれるというべきである―に対する配慮を全く欠かすことは許されないというべきであるが、つねにその全部にわたり配慮しなければならないものではないというべきであり、その程度は具体的な労働関係を踏まえて社会通念により決定すべき問題というべきである。 本件において、会社が債権者の事情に属するマスエの健康についてどの程度配慮すべきは、一概に決しられる問題ではないが、本件配転命令の必要性の度合が小さいこと、右配転の基となった人員再配置計画の実施について、会社と日軽金労組との間で、会社が特に転勤者の個人的事情に配慮することが確認されていること、債権者の事情が健康という最大限尊重されるべき価値(弁論の全趣旨により認められる、会社が前記人選に当たり配慮した持家の管理の比でないことはいうまでもない)にかかわるものであることを考慮すれば、会社が本件配転につきなした配慮をもってしては足りず、業務上の必要性との対比において、本件配転命令によって債権者の受ける影響・不利益は著しく大きいものというべきであるから、右命令は、権利の濫用にあたり、その効力を有しないものといわなければならない。 四 そうすると、債権者は、本件配転命令に応ずる義務はなく、したがって、これに応じなかったことを理由としてなされた本件解雇は、その根拠を欠如することとなり、無効なものというべきである。 |