ID番号 | : | 03136 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 藤代組・中里建設事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 建設機械が倒れて下請従業員が足を切断した事故につき、元請会社および下請会社に安全配慮義務違反があるとして損害賠償請求を認容した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法415条 民法709条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1984年10月22日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和54年 (ワ) 2488 |
裁判結果 | : | 一部認容(控訴) |
出典 | : | 時報1161号134頁/労働判例462号149頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕 1 被告Y1会社の責任について判断する。 雇傭契約において、雇主は被傭者に対して、信義則上雇傭契約の付随義務として、その被傭者が労務に服する過程でその生命、身体、健康等を危険から保護し、そのため配慮すべき義務、すなわち安全配慮義務(安全保護義務)を負うと解すべきであるから、本件においても被告Y1会社は雇主として被傭者である原告Xの生命、身体及び健康等を危険から保護するよう配慮する義務を負っていたといわなければならない。 2 被告Y2会社の責任について判断する。 前記一2のとおり、被告Y2会社が東京都から本件工事を請負い、現場に現場代理人A以下B、Cの三名の現場監督を配置して右工事を施行し、被告Y1会社は被告Y2会社から本件抜き作業を下請していたことは当事者間に争いがなく、《証拠略》によれば、右三名の監督員は常駐し、本件工事における品質管理、工程管理、安全管理の各点について、被告Y2会社作成の工事工程表により、全てにおいて現場を把握して管理監督しており、本件抜き作業についても、前日に三名の監督員とEとにより打ち合わせが行われていること、本件当日も、右三名の監督員のうちBが本件現場の監督担当で、約一時間おきに見廻る筈であったこと、下請契約においては、被告Y1会社は作業につき、被告Y2会社の工程表及び係員の指示に従うことが合意されていることが認められる。 右事実によれば、被告Y2会社は、被告Y1会社の従業員に対して雇主と同視できる程度にその労務管理について指揮監督をなし得る関係を有していたということができ、信義則上、雇主である被告Y1会社と同様の安全配慮義務を負っていたというべきである。 (中略) (一) 前記二2認定のとおり、バイブロ機の操作をしていたのは、原告Xであるが、同人がバイブロ機を仮置きしたのは合図係のDが、原告Xの二度にわたる拒絶に拘らず、合図によりクレーンを操作することによって指示したことによるものであり、また、被告Y1会社の現場責任者であるEはクレーンの運転をしていたのであるから、バイブロ機の仮置きをすることになれば、クレーンの操作が作業手順と異なるので当然にバイブロ機を仮置きしていることに気がつくはずであるのに、そのまま作業を継続していたというのであるから、被告Y1会社は前記バイブロ機を仮置きしてはならないという注意義務に違反したというべきである。 また、被告Y2会社の現場監督であったBは、当日、一回現場に見廻りに来た際、Eからバイブロ機の仮置きをしない旨の打ち合わせを聞いたが、約五分程で立ち去り、それに対して何ら指示、確認もしていないというのであり、また、《証拠略》によれば、前日の打ち合わせにおいても、Aはバイブロ機の操作については被告Y1会社の従業員は当然知っている筈であるものと軽信し、何ら言及していないことが認められる(《証拠判断略》)ことに徴すれば、被告Y2会社も原告Xを含めた被告Y1会社の従業員にバイブロ機の仮置きをしないよう指示すべき義務に違背したというべきである。 |