ID番号 | : | 03170 |
事件名 | : | 雇用関係確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 住友化学工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 佐藤首相訪米阻止・国際反戦デーの闘争において逮捕・勾留され、三〇七日間欠勤した労働者に対する事故欠勤を理由とする普通解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 出向中の労働関係 解雇(民事) / 解雇事由 / 逮捕・拘留 |
裁判年月日 | : | 1983年10月21日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ワ) 2327 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例423号42頁/労経速報1181号10頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 諏訪康雄・季刊実務民事法7号222頁 |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-出向中の労働関係〕 営業譲渡がなされ、これに伴い、原告が被告Y1会社に出向の扱いとなった日は昭和五一年一一月一日であること、そして、これは被告住友化学の事業部門の一部(軽金属事業部門)をそっくりそのまま独立させて別会社化したものでその本店所在地は同一場所であり、出向といっても名目だけで従業員の労働の実態には何ら変化がなかったこと、被告らの就業規則は全く同一内容であること、被告らとA労組との間で、被告Y1会社との間の労働協約についても、同組合と被告Y2会社との間の労働協約と全く同一内容とする旨協定されたこと、被告らの間で、出向者の勤続年数、身分、労働条件、勤務成績などはすべて被告Y2会社から同Y1会社にそのまま継続し、以後、人事考課、昇進、昇格、表彰、懲戒、退職、解雇などの人事上の取扱いについては、被告Y1会社が独自の判断で行い、同Y2会社においては、出向元としての立場から右判断に従い、これと全く同じ内容の取扱いを行ったものとして形式的手続を行う旨合意されたこと、同Y1会社の人事担当者も、前記営業譲渡に伴う出向者については同被告との間の雇用契約関係のみならず、同Y2会社との雇用契約関係がなお存続していると把握していたこと、以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。 3 以上によれば、原告の右出向は、出向元との雇用関係も存続するいわゆる在籍出向というべきであり、原告と被告ら両名の間にいずれも雇用契約関係が存在していたと解するが相当である。 〔解雇-解雇事由-逮捕・拘留〕 当時、同被告は、原告が約三〇〇日間に及ぶ欠勤をし、執行猶予付とはいえ懲役刑の有罪判決を受けた事実を重要視し、これを根拠として原告を普通解雇にしたものであり、かつ、事前に、前記認定のとおり、懲戒委員会の審議に付しているのであるから、それは懲戒解雇の場合の手続を免れる目的でなされたわけではなく、右のような事情がある場合には普通解雇とすることは一般的に相当といわざるを得ない。また、仮に、原告のように積極的に組合活動を行っていなかった者が、同一の事案を引き起したとしても、本件解雇のような経過を経て同一の措置がとられたものと推測されるのである。 従って、右の点を考慮すると、前記の事情をもってしても本件解雇が原告が組合活動をしたことの故をもってなされたものとは認めるに足りず、他にこれを認めるに足る証拠はない。 よって、本件解雇は不当労働行為に該当せず、有効というべきである。 |