ID番号 | : | 03171 |
事件名 | : | 冬期一時金差額請求控訴事件/同附帯控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | パン・アメリカン航空事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 無給欠勤が月間勤務予定時間の五〇パーセント以下の場合の取扱いについて労使間で合意に達しないまま、会社側が会社回答に従って一時金を支払った事例で労働者が右欠勤控除規定を除いた場合との差額を請求した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3章 労働基準法11条 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権 |
裁判年月日 | : | 1983年10月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (ネ) 805 昭和56年 (ネ) 1385 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1168号3頁/労働判例420号56頁 |
審級関係 | : | 一審/千葉地佐倉支/昭56. 3.23/昭和55年(ワ)1号の82 |
評釈論文 | : | 新谷真人・季刊労働法131号154頁 |
判決理由 | : | 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕 被控訴人らの会社に対する本件一時金差額請求権の存否について検討するに、右認定の事実関係からすれば、次のように判断せざるを得ない。 1 会社においては、被控訴人ら従業員に対し、毎年定期に夏期及び冬期一時金を支給する企業慣行が存在するが、支給額その他の具体的支給条件は、その都度、会社・組合間の協定(労働協約)によって定めるものとする労使慣行が確立されている。 2 そして、右協定においていわゆる欠勤控除についての取りきめが行われない場合は、五〇%を超える「無給の欠勤」につき、当然に会社の給与規程一二条B項を適用して支給額を算出する慣行がある。 3 ところで、右給与規程一二条B項の適用上、ストライキや組合活動のための不就労を「無給の欠勤」に含ませるかどうかについては労使間に対立がないでもないが、「五〇%以下」の欠勤に関しては、ストライキ等による不就労の場合をも含め、一時金からの控除を行わない取扱いが、同給与規程の解釈上も、労使慣行上も定着している。 4 しかるに、本件一時金(昭和五四年冬期一時金)に関する会社回答は、「五〇%以下」の欠勤にかかわる本件欠勤控除規定を、支給額その他の支給条件と一体化させて提示したものである。したがって、右控除規定を除き妥結する旨の組合の通告は、右一時金に関する新たな提案としての実質を有するにすぎず、同控除規定の具体的妥当性の存否はさておき、同規程を除く会社回答どおりの内容による協定を成立せしめるものではない。 5 右のとおり、本件一時金については、金額その他の支給条件を定める会社・組合間の協定が成立していないのであるから、被控訴人らにおいて具体的権利として右一時金を請求することはできないものといわなければならない。なお、本件一時金にかかる右協定の未成立にもかかわらず、被控訴人らが右具体的権利を有するものと解すべき特段の事情は認められない。 6 してみると、本件欠勤控除規定の適用による本件一時金からの控除が前記3の給与規程、労使慣行等に照らして許されず、被控訴人らは会社に対し右控除額に相当する差額請求権を有する旨の被控訴人らの主張は、右一時金の具体的支給条件が欠勤控除規定を除く会社回答どおりに確定したという前提を欠き、失当というほかはなく、会社がした本件一時金としての支払は、その旨が明示されていたかどうかにかかわらず、仮払いの性格を有するものというべきである。 |