全 情 報

ID番号 03172
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 日本ポリテク事件
争点
事案概要  合成樹脂加工品等の製造会社の工場でウレタン発泡成型加工作業に従事中に、MDIを大量に被曝し、開業医からスルピリンの投与を受けた出稼労働者が中毒性の表皮壊死症で死亡した事故で遺族が会社と開業医を相手どって損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法415条
民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1983年11月10日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 11122 
裁判結果 一部棄却・認容(確定)
出典 時報1100号96頁/タイムズ525号202頁/労働判例420号19頁
審級関係
評釈論文 秋山幹男・労災職業病の企業責任〔労災職業病健康管理【1】〕130頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 被告会社は、不法行為に基づき、Aの死亡によりA及び同人の近親者が被った損害を賠償する責任を負う。
(中略)
 被告Yの診断を受けた際、被告Yの質問に対してAは訴外会社において自動車の部品を作っている旨答え、弟のBは訴外会社において車のドアの内側のビニール加工をしている旨答えたと認められる。しかし、《証拠略》によれば、被告Yは訴外会社の仕事内容をほとんど知らず、MDIやウレタン発泡成型加工作業等についての知識もなかった(鑑定の結果によればこのことはやむをえなかったということができる。)と認められるから、被告Yは右の答えからAがMDI(あるいはそのときのAの症状を引き起こしうるような化学物質)を取り扱っており、これがAの症状の原因であることを知りえたと解することはできない。その他、被告YがAの症状の原因はMDI(あるいは何らかの化学物質)であることを知りえたと認めるに足りる証拠はない。したがって、被告YがAの症状の原因がMDI(あるいは何らかの化学物質)であるとの前提の下に治療を行わなかったことが診療契約上の義務違反又は過失にあたるということはできない。よって、被告Yはこの点に関してもAないし同人の近親者に対し債務不履行又は不法行為責任を負うことはないというべきである。