全 情 報

ID番号 03179
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 並木精密宝石秋田工場事件
争点
事案概要  期間一カ月の労動契約を二八回にわたり反覆更新してきたパートタイマーに対する、一日八時間労働を五時間四五分にすることについての合意が成立しないことを理由にする雇止が無効とされた事例。
 「寸志」の名称で一二月と七月にパートタイマーに支払われていた金員につき、賃金の一部である賞与とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法11条
民法1条
民法628条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の範囲
解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1983年12月15日
裁判所名 秋田地横手支
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (ワ) 47 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例431号126頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 また原告は期間を一か月とする雇傭契約は公序良俗に反し無効である旨主張するが、企業の目的から有期の雇傭契約を締結することは、何ら法律の反することではないばかりでなく、公序良俗に反すると言うことはできず、右主張は失当であることは明らかであり、更に、原告は、期間の定めのない契約に転化した旨主張するが、前記認定事実によれば、他に特別な法的根拠が認められず、かつ原告と被告との間で右主張を認めるに足りる新たな合意が成立したことの主張、立証がない以上、途中で期間の定めのない契約に転化することは認めることはできない。
 (4) しかしながら右(二)認定事実によれば、原告と被告との雇傭契約が一か月の期間の定めがあるとしても、右契約の当初において被告は原告に長期間勤務することを要望し、原告もこれを承諾していたこと、右契約が、昭和五五年一〇月まで二八回に亘って機械的に反覆継続されてきたこと、右契約と同様のパートタイマーについても、パートタイマー本人が希望しないかぎり、契約の更新が当然なされてきたこと、更には原告らパートタイマーの作業の内容は正社員と同一のもので差異がないことが認められ、以上からすると、右契約は期間を一か月と定められているが、当然更新されることが予定されていたと解するのが相当であり、単に期間が満了したとの理由だけでは被告は傭止めをせず、原告らパートタイマーもこれを期待かつ信頼し、このような相互関係のもとで労働契約関係が存続、維持されてきたものであり、したがって、期間満了によって労働契約を終了させるためには、傭止めの意思表示が必要であるばかりでなく、右傭止めをするについても、従来の取扱いを変更してもやむを得ない事情が必要であると解するところ、右の点につき、何らの主張、立証がない(被告が原告に傭止めの意思表示をしていないことは弁論の全趣旨から明らかである。)以上、期間満了というだけでは雇傭契約の存続を否定することはできない。
(中略)
 (2) そして、右傭止めの意思表示は、不況により被告に生じた過剩人員を整理するため原、被告間の雇傭契約を終了させる趣旨のもとになされたことはその主張自体から明らかであり、その効力の判断にあたっては、右雇傭契約の前記2の特質に照らして、通常の整理解雇に関する法理を類推することが相当であり、整理解雇が是認されるためには、少なくとも具体的な解雇対象者の員数及びその選定が客観的、合理的な基準にもとづくものであることを要するところ、この点について被告はなんら主張立証するところがない。
 そうすると、被告の前記主張はその余の点を判断するまでもなく失当といわなければならない。
〔賃金-賃金の範囲〕
 (二) 同3(二)の事実のうち、一日当りの最低賃金額を除く各事実はいずれも当事者間に争いがない。
 被告に適用される最低賃金額について争いがあるが、(証拠略)によれば、右金額は昭和五六年一月九日から一時間当り金三七五円、昭和五七年二月四日から一時間当り金三九九円であることが認められ、昭和五六年一月九日から一時間当り金三三六円が適用されるのは、雇入れ後六か月未満の技能習得中の者など原告には該当しない条件に当る者に適用される金額であり、昭和五七年二月八日から時間給を定めた原告は一時間金三九九円であり、したがって一日では金三一九二円であり、一日当りの金三一八七円が原告に適用されるものではない。
 (三) 同3(三)の事実のうち、被告がパートタイマーに対し昭和五五年一二月、昭和五六年七月、同年一二月、昭和五七年七月の四回にわたり、最低金一万五〇〇〇円を支給したことは当事者間に争いない。被告は右支給は寸志であると主張するが、パートタイマー全員に支給されるものである以上、その名義の如何にかかわらず、賞与とみなされるもので、賃金の一部と認めることができる。