ID番号 | : | 03191 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 航空自衛隊第六航空団事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 航空自衛隊の操縦士が夜間要撃訓練中にスロットル・ケーブルの素線が破断して減速不能となり着陸に失敗して死亡した事故につき遺族が国に対して損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1982年3月29日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和52年 (ワ) 6065 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 時報1053号123頁/タイムズ475号93頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕 1 昭和四六年三月二四日から同年四月八日にかけて、第六航空団において定期検査が行われたが、同航空団は、既に同年一月において、前記昭和四五年六月五日付け期限付技術指令書に基づき、F-一〇四J航空機の交換用のスロットル・ケーブルを入手していた(以上の事実は当事者間に争いがない。)にもかかわらず、右航空団で定期検査を担当する整備補給群検査隊長、同群本部整備統制班長、整備主任、品質管理班長訴外Aらは、前記昭和四五年六月五日付技術指令書が至急実施ではなく、普通実施であったため、さほど緊急性がないと判断し、ことに三か月後の昭和四六年七月には本件事故機について定期修理がなされることになっていたため、定期修理の際にスロットル・ケーブルを交換すれば足りると考え、更に、右航空団では航空実験団のF-一〇四J航空機のスロットル・ケーブル交換作業を実施したところ、技術的によく分からない箇所が出、訴外B株式会社に照会したところ、右訴外会社から回答が得られたのは、定期検査の終わりころであったという事情も加わったうえ、F-一〇四J航空機のスロットル・ケーブルは、前記のとおり従前は時間管理の対象ではなかったため、前記担当者らは、従前から行っている目視及び触手検査で異常が発見されない限り、いつまででも使用できるという考えから抜け切っておらず、これに加え、前記担当者らは、前記のとおり断線例があったことから、後部スロットル・ケーブルについては、エンジン室で暖められ、さびを防ぐ油が取れやすいという事情があるから断線しやすいが、前部のスロットル・ケーブルは後部のものより相当長持ちすると考えていた等の理由から、前記期限付技術指令書で実施の期限が「部品受領後、次期PE(定期検査)又はIRAN(定期修理)時までのいずれか早い実施可能な時期」と定められていたことを自己に有利に解釈し、スロットル・ケーブルの交換実施が可能なのは、本件事故機の場合、定期修理時であるとし、定期検査の際には昭和四五年一月二六日付け期限付技術指令書記載の目視及び触手検査を再度実施するにとどめた。 2 右定期検査の時点で、本件事故機の飛行時間は既に一〇〇〇時間を超えていた。 右事実によれば、被告の前記安全配慮義務の履行補助者であった第六航空団の定期検査実施担当者らは、正当な理由もなく、安易な判断から、所定のスロットル・ケーブル交換作業を実施せず、これを定期修理時に順延し、昭和四五年一月二六日付けの期限付技術指令書記載の検査を再度履行したにとどまり、本件事故機について飛行禁止措置を採ることなく放置したものであることが明らかであり、被告は亡C対する前記安全配慮義務に違背したといわざるを得ない。 したがって、被告は、右安全配慮義務違背により亡Cが受けた損害を賠償する義務を負う。 |