ID番号 | : | 03196 |
事件名 | : | 仮払金返戻請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 宝運輸事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 本案訴訟で敗訴した労働者に対して、従業員たる地位保全および賃金仮払の仮処分命令により支払われた仮払金の返還が請求された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法703条 民事訴訟法(平成8年改正前)760条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停 |
裁判年月日 | : | 1982年8月17日 |
裁判所名 | : | 広島地福山支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和55年 (ワ) 381 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1129号3頁/労働判例398号54頁 |
審級関係 | : | 上告審/最高三小/昭63. 3.15/昭和58年(オ)1406号 |
評釈論文 | : | 菅充行・労働判例415号4頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇と争訟〕 被告は本件仮払金は生活費として全て費消され利得は現存しないので善意の利得者として返還義務はないと主張する。 しかしながら、一般に金銭による利得は、これを消費しても、金銭の融通性からして、通常は当該金銭がなければ他の金銭をもってそれに充てたとみるべきであるから、右金銭による利得は現存するものと推定されるところ、被告の右主張は特別の事由の存在をいうものでないから、被告に受領した利得が現存しないとはいえない。 次に、被告は原告に対し五〇万円の退職金を返還することと引換えで本件返払金を受領したので、右額の限度で利得は現存しないと主張するので判断するに、(証拠略)によれば、被告は昭和五〇年二月二八日原告会社を任意退職し退職金五〇万円を受領したが、その後、右退職は実質的な解雇であり解雇は無効であるとして本件仮処分決定を得たこと、同年六月七日被告が原告会社代表者のAに対し右決定を履行するよう求めたところ、同人は前記五〇万円を返還することが前提であるとしてこれを拒絶したため、被告は労働組合を通じて同月一三日原告あてに五〇万円を送金したこと、が認められ右認定をくつがえすに足る証拠はない。 右の事実からすると、被告の本件仮払金の受領は実質的に前記退職金の返還を前提としたもので両者は密接な関係にあり、退職金と賃金仮払金とは本来両立しうるものでないから、公平の見地からして、被告の本件仮払金による利得は右五〇万円の限度で現存しないというべきである。 |