全 情 報

ID番号 03200
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 京和タクシー事件
争点
事案概要  タクシー会社が従業員の採用の際に行った健康診断の結果、要精密検査の診断が出ていたのに本人に通知せず運転業務に就かせたため、入院を要するまで病勢(肺結核)が進行するにいたったとして、損害賠償を請求された事例。
参照法条 民法415条
労働安全衛生法66条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1982年10月7日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ワ) 562 
裁判結果 一部認容
出典 タイムズ485号159頁/労働判例404号72頁
審級関係
評釈論文 須藤英章・労災職業病の企業責任〔労災職業病健康管理【1】〕256頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 労働安全衛生法は憲法二七条をうけて事業者に種々の義務を課しており被告会社は旅客運送事業者として雇用している労働者の健康を保持すべき義務を負う。すなわち、 (一) 労働安全衛生法六六条及び同規則四三条、四四条に基づき、労働者の雇入時に胸部エックス線検査及びかくたん検査等の健康診断を実施する義務を負担し、 (二) 右健康診断の事後措置として同法六八条及び同規則四六条に基づき、結核にかかった労働者に対し就業を禁止し、又右に至らない場合でも結核の発病の虞れがあると診断された労働者に対しておおむねかくたん検査、聴診、打診その他必要な精密検査を行なう義務を負担している。
 このように、被告会社は労働安全衛生法、同規則により労働者に対する健康診断の実施が義務づけられており右健康診断の結果は、事業者が労働者を採用するかどうかを判断するうえの資料となるばかりでなく、採用後は労働者の健康を管理するための指針となり労働者自身もまた自己の健康管理を行なううえで重要な資料となるものであり、同法、同規則が専ら労働者の職場での健康維持を立法趣旨としていることからも、殊に労働者の健康状態が不良かまたはその疑がある場合は採用後遅滞なく労働者に健康診断の結果を告知すべき義務があるものというべきである。