ID番号 | : | 03201 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 航空自衛隊実験航空隊事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 航空自衛隊員が海上における救難訓練中に溺死した事故につき、遺族が国に対して損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1982年10月12日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ネ) 3161 |
裁判結果 | : | 一部変更 |
出典 | : | タイムズ480号95頁 |
審級関係 | : | 一審/05667/東京地/昭53.11.27/昭和51年(ワ)10936号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕 そもそも本件救難保命訓練のような人命の危険を伴う訓練を計画、実施するに当たっては、訓練計画者は公務自体に内在する危険をあらかじめ予見して物的及び人的環境、条件を整備し、もって事故の発生を未然に防止して公務員の生命、健康を危険から保護するよう配慮すべき義務があり、したがって、本件のような訓練に当たっては、被訓練者全員につき生命、健康を保護するため遊泳能力に関係なく救命胴衣を装着させるべき義務があり(洋上漂流中、ペアを組んだ二名の被訓練者のうちの一名が救命胴衣及び一人用浮舟を装備し、他の一名がなんらの装備をしていない場合、前者が後者の依頼に応じて救命胴衣を貸与し自分の分がなくなることがあるのは当然予想されるところであるから、これを避けるためにも被訓練者の全員に救命胴衣を装着されるべきである。)、本件では救命胴衣の数以上の人員を訓練に参加させた計画自体及び救命胴衣を装着していない義を吊り降ろさせた点において右配慮に欠けていたものといわざるをえない。ヘリコプターからの吊り降ろしに当たって、被訓練者が救命胴衣なしの吊り降ろしをメディックに了解したとしても、救命胴衣を装着させた上で訓練すべき被控訴人の義務を免除するものではない。 被控訴人は、本件事故の原因は、Aが本件訓練に際し救命胴衣を支給されていたにもかかわらずこれをB二尉に貸与し、その返還を求めず、ヘリコプターから海上に吊り降ろされるに当たってメディックから救命胴衣のない状態で大丈夫かどうか確認された際に拒否することなく自らの意思により救命胴衣のない状態での吊り降ろしを了解し吊り降ろされたことにある旨主張するが、Aの右行為をもって計画者、実施者の責任を否定するものと考えることはできない。 したがって、被控訴人の履行補助者であるC一佐、D二佐が救命胴衣の数を超える人員を被訓練者として前記のような訓練を計画し、実施したのは、安全配慮義務に違反したものであり、本件事故はこれによって発生したものというべく、被控訴人は右義務違反に基づく損害賠償責任を免れない。 |