全 情 報

ID番号 03204
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 共和梱包事件
争点
事案概要  輸出せんいのこん包業務等を営む会社が経営不振のため企業閉鎖をして従業員を解雇したケースでその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働組合法16条
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 協議説得義務
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1982年11月16日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ヨ) 446 
裁判結果 却下(控訴)
出典 労働民例集33巻6号952頁
審級関係
評釈論文 下井隆史・季刊実務民事法4号240頁
判決理由 〔解雇-整理解雇-協議説得義務〕
 一般に労働協約における事前協議条項は、賃金、労働条件、諸規定の改廃、解雇、配置転換等にあたり、会社側の独断専行を避け、組合と協議してその意見を充分反映させるとともに、他方、会社の趣旨とするところを組合側に了解させ、できる限り相互の理解と納得の形成されたうえ、事を処理しようとする趣旨から定められたものと解するのが相当である。
 したがって、労働条件等につき事前協議約款が締結されたときは、会社は、組合と団体交渉などを通じて誠実に納得のいく説明を行いその了解を得られるよう尽力すべきであり、単に形式的に団体交渉の機会を数回もったとか、一応の説明を行ったとかいうだけでは、事前協議を行ったことには到底ならず、右約款不履行というのほかないが、必要な協議の程度については、一義的に断定することは困難というべく、具体的な労使間の実情をふまえたうえ、協議の回数、時期、内容及び会社の経営状況ならびに従前の経緯など諸般の事情を考慮して、これを決するのが相当であると解される。もっとも、協議約款は同意約款ではないから、諸般の事情から判断して会社が組合の了解を得るべく尽力したにもかかわらず、結局、組合の了解を得るに至らなかったとしても、事前協議約款に違反するものでないことは、いうまでもない。
〔解雇-解雇権の濫用〕
 前判示認定説示のところから明らかな如く、本件解雇は、債務者会社が長期の不況により経営が行き詰まり、既に保有資産の大半を失い、もはや企業再建が極めて困難となり企業閉鎖のほかない状態に立ち至つたため、退職金引当資産のあるうちに従業員の解雇に踏み切ってなされたものであって、これにより経営者の不当な利益を計ることを企図したものではなく、全疎明によるも、他に債務者が解雇権を濫用して本件解雇を敢行したという事情は認め難いから、債権者の、本件解雇が解雇権の濫用であるとの主張も採用することができない。