ID番号 | : | 03207 |
事件名 | : | 退職承認処分取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 陸上自衛隊第三二普通科連隊事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 陸上自衛隊の陸士長の退職の申出が後に違法な退職勧奨の結果であり取消すことができる瑕疵があるとして退職承認処分の取消が請求された事例。 |
参照法条 | : | 民法96条 |
体系項目 | : | 退職 / 退職願 / 退職願と強迫 |
裁判年月日 | : | 1982年12月22日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (行ウ) 148 |
裁判結果 | : | 一部認容(確定) |
出典 | : | 行裁例集33巻12号2560頁/時報1070号106頁/労働判例400号22頁/訟務月報29巻6号1128頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 中川剛・公務員判例百選〔別冊ジュリスト88号〕32頁 |
判決理由 | : | 〔退職-退職願-退職願と強迫〕 本件においては、真に原告が退職の意思を有しこれを表示しようとするのであれば正規の用紙による退職願を提出することが容易にできたものと考えられるにもかかわらず(これを妨げるような客観的な事情の存在を認める証拠は全くない。)既述のように、原告から、通常隊員が退職する際に提出する印刷された正規の退職願用紙による退職願は提出されておらず、けい紙に退職する旨の文言が記載された極めて異例の形態の書面が提出されているに過ぎないのであって、この事実自体によっても原告の退職の意思表示の成立過程になんらかの異常な事態の存在を疑わせるものがあることを否定することができないのであるが、右(1)ないし(4)で述べたところに、前記一の2認定の事実を総合すると、原告は、被告Y1、同Y2及びその他の陸曹らから、営内班長室において、多少の中断はあったにしても昭和五〇年一一月二一日午後一時三〇分ころからほぼ連続して長時間にわたって、ほとんど睡眠をとらせてもらえずに、執ような退職勧奨を受けたため、同月二四日午前五時ころには、激しい疲労と睡魔に苦しめられるようになり、その状態のもとで退職する旨の文言をけい紙に書くように何度も迫られ、更に書けば寝かせるなどと言われ、遂にそれ以上抵抗する気力を失い、やむなく右(一)認定の書面を作成して提出した、と認められる。このことからすれば、原告の、右書面の作成提出による退職の申し出は、少なくとも、原告が激しい疲労と睡魔による苦痛の状態に陥つているのに乗じ、退職願を書くことを拒否すれば更に苦痛の継続することを暗示し原告を畏怖させ、これを行わせたものというべきであり、強迫によりされたものとして取り消すことができると解するのが相当である。 |