全 情 報

ID番号 03208
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 布施自動車教習所事件
争点
事案概要  事業所の閉鎖により解雇された者が、教習所の取締役らを相手として、教習生の入所受付停止、転退校措置により経営不振に陥ったものであるとして、一時金の不支給につき相当額の損害賠償を請求した事例。
参照法条 商法266条の3
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 営業の廃止と賃金請求権
裁判年月日 1982年12月24日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 6132 
裁判結果 一部認容
出典 労経速報1140号7頁/労働判例402号40頁
審級関係 控訴審/03114/大阪高/昭59. 3.15/昭和57年(ネ)2447号
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-営業の廃止と賃金請求権〕
 以上認定の事実によれば、A教習所が被告らの決議により昭和五二年一一月一日から入所受付停止の措置をとったことの適否は暫く措くとして、少なくとも昭和五二年一二月以降からは、当時、A教習所の経営が行き詰って事業を廃止せざるを得ないような状態にはなく、被告Y自身も昭和五三年二月中旬頃までは、その営業の継続を考えていたのであるし、また、在籍教習生の数もかなり減少していたのであるから、A教習所の代表取締役ないし取締役である被告らとしては、さきに決定した入所受付停止の措置をやめ、新たに入所受付再開の決議をするなどして、A教習所の収入をはかる措置をとるべきであったところ、被告らは、その一致した意思に基づく悪意又は重大な過失により、右入所受付再開の措置をとらず、A教習所の収入の途を閉ざしたままに放置し、しかも在籍教習生の転退校をはかって、多額の費用を支出したものというべきであり、また、そのために、A教習所は、多額の債務を負担するに至り、原告らの夏季一時金の残額や、昭和五三年四、五月分の賃金を支払うことができなくなったものというべきである。
 そうとすれば、被告らが右入所受付再開の措置をとらず、また、在籍教習生の転退校の措置をとったことが、民法上の不法行為を構成するか否かは暫く措くとしても、被告らは、悪意又は重大な過失により、A教習所の代表取締役ないし取締役としての任務を怠り、原告らに右夏季一時金の残額及び昭和五三年四、五月分の賃金相当額の損害を被らせたものというべきであるから、商法二六六条の三により、原告らの被った右損害を賠償すべき義務があるものというべきである。