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ID番号 03216
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 橋本工業・歌工務店事件
争点
事案概要  建築現場の掘削作業中の下請会社の従業員の事故につき、下請会社と元請会社の安全配慮義務違反が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
民法715条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1981年3月19日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 6669 
裁判結果 一部認容
出典 時報1009号128頁/労働判例362号18頁/労経速報1090号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 (一) Aが被告工務店の従業員として、本件工事の現場監督をしていたことは、当事者間に争いがない。
 (二) 右争いのない事実に、《証拠略》を総合すれば、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
 Aは現場監督として本件工事現場に常駐し、作業手順の決定、下請けとの打合せ等を行うほか、作業員らに対する作業の際の危険防止の指示等安全管理を含む総括的な監督を行い、原告ら下請けの作業員はAの指示に従って作業していたが、Aは、本件事故の日の前日本件作業による掘削予定場所の地中にガス管が埋っているとの報告を受け、それが現在使用されていないガス管であることを確認したのに、本件事故当日、単に脇屋に対し本件バックホーの操作中バックホーの爪でそれを引掛けて跳ね飛ばしたりしないように注意したにとどまり、右ガス管を切断しあるいはロープで結ぶなどの安全措置を講ずべきことをB又は原告に指示するかあるいは自らそのような安全措置を講ずることはせず、Bらに本件作業の続行を命じた。
 (三) 右認定の事実及び前記1(二)の事実関係によれば、Aは本件工事の現場監督として、掘削場所にガス管が埋っている旨の報告を受けその確認をしたのであるから、作業員らに対し前記のような安全措置を講ずべきことを指示しあるいは自らそのような措置を講じて本件事故の発生を未然に防止すべき注意義務を負っていたところ、同人はこれを怠り、Bに対し単に注意して作業するようにとの指示を与えたのみで本件作業の続行を命じた過失により、本件事故を発生させたものである。
 (四) よって、被告工務店は、民法第七一五条第一項により、Aがその職務を行うにつき原告に与えた本件事故による損害を賠償する責任がある。