全 情 報

ID番号 03227
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 国鉄職員事件
争点
事案概要  成田空港の開港阻止を企図した過激派の集団に参加して兇器準備集合罪等の罪に該当する行為をしたことを理由としてなされた国鉄職員に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
日本国有鉄道法31条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
裁判年月日 1981年5月20日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和53年 (ヨ) 2372 
裁判結果 却下
出典 時報1007号119頁/労経速報1108号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕
 被申請人のように、極めて高度の公共性を有する公法上の法人であって、公共の利益と密接な関係を有する事業の運営を目的とする企業体においては、その事業の運営内容のみならず、更に広くその事業のあり方自体が社会的な批判の対象とされるのであって、その事業の円滑な運営の確保と並んでその廉潔性の保持が社会から要請ないし期待されていることなどを考慮すると、就業規則六六条一七号の「その他著しく不都合な行いのあったとき」という規定は、単に職場内又は職務遂行に関係のある所為のみを対象としているものではなく、被申請人の右社会的評価を低下毀損するおそれがあると客観的に認められる職場外の職務遂行に関係のない所為のうちで、著しく不都合なものと評価されるがごときものをも包含するものと解するのが相当である(昭和四五年(オ)第一一九六号昭和四九年二月二八日第一小法廷判決・民集第二八巻一号六六頁参照)。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務外非行〕
 懲戒権者たる被申請人の総裁は、懲戒事由に当る行為をした職員に対し、国鉄法三一条一項所定の、免職、停職、減給又は戒告の懲戒処分のうち、どの処分を選択するかを決定するにあたっては、懲戒事由に該当すると認められる行為の外部に表われた態様のほか右行為の原因、動機、状況、結果等を考虜すべきことはもちろん、更に、当該職員のその前後における態度、懲戒処分等の処分歴、社会的環境、選択する処分が他の職員及び社会に与える影響等諸般の事情を総合考慮したうえで、被申請人の企業秩序の維持確保という見地から考えて相当と判断した処分を選択すべく、そして、右の判断については懲戒権者の裁量が認められているのであって、懲戒権者の処分選択が、当該行為との対比において甚だしく均衡を失する等社会通念に照らして合理性を欠くものとして違法性を有しないかぎり、それは懲戒権者の裁量の範囲内にあるものとしてその効力を否定することはできない。そしてこの理は、懲戒権者が免職処分の選択を相当とした判断についても妥当するのであって、免職処分の選択に当たっては、他の処分の選択に比較して特別に慎重な配慮を要することを勘案したうえで、右判断が裁量の範囲をこえているかどうかを検討してその効力を判断しなければならない。