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ID番号 03234
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 川義事件
争点
事案概要  宿直勤務中の者が、窃盗目的で訪れた元従業員に殺されたことにつき、使用者に安全配慮義務違反が認められた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1981年9月28日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ワ) 1784 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例378号75頁/労経速報1114号11頁
審級関係 上告審/03115/最高三小/昭59. 4.10/昭和58年(オ)152号
評釈論文 香川孝三・ジュリスト773号136頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
1 使用者は労働契約に基づいて労働者からの労務提供を受領するに当り、使用者がなした具体的労務指揮または提供した場所、施設等から危険が労働者に及ばないように労働者の安全につき配慮する義務があると解されるところ、本件についてみると、前認定によると使用者である被告は康裕に対し、昭和五三年八月一三日午後九時から二四時間の宿直勤務を命じ、宿直勤務の場所を本件社屋内、就寝場所を同社屋一階商品陳列場と指示し、これらの場所を康裕に提供したのであるから、被告は右指示した宿直勤務ないしは右提供した場所から危険が発生しないように危険の発生そのものを防止するか、発生した危険から容易に逃れられるように回避措置を講ずる義務があったといわねばならない。本件につきこれを更に具体的にいうならば、宿直勤務の場所である本件社屋内に、宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入しないように物的設備(例えばのぞき窓)を施す、万一盗賊が侵入した場合はこれが加えるかも知れない危害から逃れることができるような物的施設(例えば防犯ベル)を設ける、そしてこれら物的条件を十分に整備することが困難であるときは、宿直員に対する教育を十分に行なって宿直員の危険回避に関する知識を高め、危険に対する適切なる対応能力を養成し、もって物的条件と相まって危険が労働者に及ばないようにする義務があったものといわねばならない。右使用者に課せられた具体的安全配慮義務の内容は、本件労働契約の趣旨、内容、命じた宿直勤務の内容、提供された勤務場所及び施設等を総合し、これら事実関係のもとで条理上導き出されるものということができる。