全 情 報

ID番号 03240
事件名 雇用関係存続確認請求事件
いわゆる事件名 古河鉱業事件
争点
事案概要  業務上の重要秘密漏えい行為を理由とする特定政党員たる従業員に対する懲戒解雇を有効とした事例。
 解雇予告の除外認定を受けていない解雇の効力を認めた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働基準法20条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 守秘義務違反
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係
裁判年月日 1980年2月18日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ネ) 667 
裁判結果 確定
出典 労働民例集31巻1号49頁
審級関係 一審/00581/前橋地/昭50. 3.18/昭和39年(ワ)145号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-守秘義務違反〕
 A及びBに対する懲戒解雇は処分の基礎となる事実が存し、処分の量定においても裁量の範囲逸脱、裁量権の濫用はみられない。さらに会社がかねてから、日本共産党員であるAの業務課内での勢力拡大と民青同盟員であるBの組合青婦部内における指導的人物としての動静とに注目していたことは明らかである。しかし会社がAらを含む日本共産党員・民青同盟員ら共産主義者たる従業員及び正当な組合活動を行う従業員を嫌悪し、これらを企業外に排除する等不利益な取扱をする意思を有し、これと同心会の結成活動とにより、組合の反共化御用化をはかつたとの点についてこれを肯認するに足りる証拠がないことは、前記二2(一)及び(二)(1)ないし(3)で説明したところから明らかである。
 よつて本件解雇は思想ないし正当組合活動ゆえになされたものであつて、組合の運営に対する支配介入にあたるとは認められないから、労働組合法七条一、三号、労働基準法三条に違反するとはいえず、これが憲法一四、一九、二八条に違反するとの主張はその前提を欠き、かつ右のような事情のもとでは、本件解雇が権利の濫用、信義則違反であるということもできない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒解雇の普通解雇への転換〕
 就規七一条四号が、「懲戒解雇は予告期間を設けないで即時解雇する。但しその場合は事前に行政官庁の認定を受ける。」と規定することは争いないところ、会社がAらの解雇の意思表示後の昭和三七年八月一日に高崎労働基準監督署長から労働基準法二〇条三項所定の認定を受けたことは争いがない。
 右規定は労働基準法二〇条一項但書、三項、一九条二項の規定を承けたものと解されるのであるが、既に説明したとおり、本件懲戒解雇は労働者の責に帰すべき事由に基づくのであるから、三〇日前の予告ないし三〇日分の平均賃金の提供がなくても、会社のした懲戒解雇の意思表示は即時効力を発生すべき筋合であつて、除外事由の確認処分にすぎない行政官庁の右認定を当時得ていなくても、その効力を左右されない。よつてこの点に関するAらの主張は採用できない。