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ID番号 03242
事件名 損害賠償請求控訴事件/同附帯控訴事件
いわゆる事件名 陸上自衛隊第七通信大隊事件
争点
事案概要  自衛隊車両の転落事故により自衛隊員が死亡した事故につき、国に安全配慮義務違反があるとして損害賠償請求を認容した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1980年2月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ネ) 951 
昭和54年 (ネ) 2523 
裁判結果 変更(上告)
出典 時報961号80頁/東高民時報31巻2号27頁/タイムズ413号94頁/訟務月報26巻7号1094頁/交通民集13巻1号37頁
審級関係 上告審/03176/最高三小/昭58.12. 6/昭和55年(オ)577号
評釈論文 遠藤きみ・法律のひろば33巻5号74頁/藤村啓・昭和55年行政関係判例解説152頁/富井利安・判例評論271号22頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 控訴人らは、本件死亡事故は被控訴人が安全配慮義務を怠つたことにより発生したものであると主張し、被控訴人はこれを争うので検討する。
 〈証拠略〉を綜合すると、
 本件事故車は全長五・一二メートル、全幅一・八メートルでそのうち荷台部分の全長(内法)二・三一メートル、全幅(内法)一・七四五メートルで天蓋のない武器運搬車として製造されたものであるが、人員及び貨物輸送を用途とするものとして検査・登録されていた。そして人の乗ることを予定して荷台の内側両側に折畳式長椅子が設置されていたが、乗員の安定を保つための座席ベルト等の設置はなく、後端部は床面から高さ約〇・五メートルのあおりがあるが、その上方には〇・九メートルの高さの所に布製ロープが横に一条張られているのみで、本件事故当時に床面から高さ約一・五八メートルの四本の鉄製幌骨で支えてあつた幌も荷台の後端部までは被覆してはいなかつた。亡Aは本件事故車に乗つて右長椅子にB一士とともに坐つていたところ、本件事故車が転落・転覆した際車外約五メートルの地点まで投げ出された。
 以上の事実が認められ(右認定に反する証拠はない)、右認定の事実と前記争いのない事実を綜合すれば、亡Aは上司の命により公務に従事中C三曹の運転操作の誤りにより本件事故車が路肩を越えて転落・転覆し、そのため荷台後端部から車外に投げ出されて受傷し、死亡するに至つたものとみるのが相当であり、本件事故が、不可抗力に基づくものではなく亡A自身の故意過失に起因する受傷死亡でないことも明らかである。そしてC三曹が敢えて上司の指揮命令に背反して本件事故車を運転したことの主張立証はないのであるから、右運転上に過失があつたにしても、控訴人は公務に従事するものをしてその生命、身体に危険を及ぼすことのないよう配慮すべき義務いわゆる安全配慮義務を怠つたものというべく、転落、転覆時にも乗員をして車外に投出されないよう施設すべき義務が控訴人に課せられているか否かを論ずるまでもなく右により亡Aの蒙つた損害を賠償すべき義務がある。