全 情 報

ID番号 03252
事件名 地位保全金員支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 大鵬産業事件
争点
事案概要  会社解散を理由とする解雇につき、労働協約の人事同意款に違反しているとして無効とした事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法16条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
解雇(民事) / 解雇事由 / 就業規則所定の解雇事由の意義
裁判年月日 1980年3月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和52年 (ヨ) 5474 
裁判結果 認容
出典 労働判例340号63頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・ジュリスト753号130頁
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止〕
〔解雇-解雇事由-上司反抗〕
 会社は、数年前より赤字決算を続け、その経営状態が悪化していたことは明らかであるが、昭和五二年後半になって手形不渡事故が起るとか、従業員に対する賃金の遅欠配が起るというような最悪の突発的緊急事態が現実に発生した訳ではないから、本件解散は今後の事業継続の見通しが暗いこと、即ち先行不安による予防的な色彩が濃厚であると言わざるを得ない。
 したがって、会社は、会社解散、全員解雇に当っては、いわゆる倒産による解散の場合以上に、事前に十分時間をかけて従業員に対し解散しなければならない根拠について、客観的資料の裏付けを伴った相当詳細な説明をなし、了解を得るよう努力すべきものと解するのが相当であるが、前認定の事実関係によると、まず会社解散の発表が年末一時金団交中かなり唐突になされたこともさることながら、会社はその後における組合との団交においても、既に役員会で決定した事実を金科玉条として組合の強い要求があった経理資料の公開を一顧だにせず、また会社解散の根拠に関する説明も抽象的であるか、或は稍具体的な説明がなされた場合でも裏付となるべき資料を伴わないもので、きわめて説得力に乏しいと解さざるを得ず、遂には解散問題に関する団交拒否という強硬姿勢をとりつつ会社解散決議に至ったのであり、その手続の進め方は甚だ性急であったと判断せざるを得ない。そうすると、会社は本件協約に定められた前記信義則に基づく協議を十分尽したものとは到底認めることができない。
 よって、本件解雇は本件協約に違反したものとして、申請人らのその余の主張について判断するまでもなく無効と解すべきである。