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ID番号 03259
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 航空自衛隊航空救難群事件
争点
事案概要  遭難ジェット機を捜索していた自衛隊機の墜落により自衛隊員が死亡した事故につき、国に安全配慮義務違反があるとして損害賠償請求を認容した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1980年5月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ワ) 7906 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 時報971号75頁/タイムズ424号131頁/訟務月報26巻9号1513頁/交通民集13巻3号619頁
審級関係 控訴審/東京高/昭57. 5.31/昭和55年(ネ)1364号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 4 そこで、Aの操縦上の過失が事故の原因であることを前提として被告の責任について検討する。
 (イ) 国が公務員に対して負つている安全配慮義務は、被告が公務遂行のために設置した施設若しくは器具等を設置管理又は勤務条件等を支配管理することに由来するものであるから、公務遂行中の全ての国家公務員が他の公務従事中の者に対する関係で被告の右義務の履行補助者であるということはできず、そこには自ずと性質上の制約が存在し、右履行補助者とは被告の管理する物的設備もしくは人的設備に対する支配管理の職務に従事している者をいうと解するのが相当である。そして、右支配管理関係の有無を判断するにあたつては、位階上の形式的身分関係ばかりではなく、当該職務の遂行にあたり、職務の内容上機械的にその職務を遂行するだけではなく、ある程度自己の判断に基きその職務を遂行する権限を有し、その職務を遂行する過程で他の公務従事中の者の作業の条件、環境を決定しその生命、健康等を実質上左右しうるほどの影響力を有しているか否かをその職務の危険の程度等を勘案して具体的状況に応じて考慮することにより決定されるべきである。
 (二) これを本件につき考察するに、Aが公務の遂行として一民の同乗する事故機を操縦していたことは当事者間に争いがなく、〈証拠略〉によれば、一般的に機長は飛行中搭乗者を指揮し、航空業務の実施について責任を有するばかりでなく、本件のような遭難機の捜索については、機長を含めた捜索隊員は、航空幕僚監部作成の救難捜索法に基づき指導を受け更に飛行前のブリーフイング等で捜索の実施方法等についてあらかじめ指示を受けるが、現地における具体的な捜索方法については、地形等具体的状況に応じて判断し実施することが機長にまかされていること、の点の被告の主張は失当である。