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ID番号 03260
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 航空自衛隊第六航空団事件
争点
事案概要  要撃訓練計画に基づく飛行中に自衛隊機が墜落し、自衛隊員が死亡した事故につき、国に安全配慮義務違反があるとして損害賠償請求を認容した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1980年5月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ワ) 8968 
裁判結果 一部棄却・認容
出典 時報969号70頁
審級関係 控訴審/03113/東京高/昭59. 2.20/昭和55年(ネ)1307号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 1 国は、国家公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は国家公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、国家公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っているものと解すべきであり(最高裁昭和五〇年二月二五日第三小法廷判決、民集二九巻二号一四三頁)、本件のようにジェット機に搭乗して要撃訓練に従事する航空自衛隊員に対しては、ジェット機の飛行の安全を保持し、その墜落等の危険を防止するために必要な諸般の措置をとることが要請されるところであり、右措置の中に、ジェット機の各部々品の性能を保持し、機体の整備、点検、修理等を充分に実施すべきことが含まれることはいうまでもないところである。
(中略)
 3 そこで、被告において前記安全配慮義務を履行したといえるか否かについて検討することとする。
 《証拠略》によれば、航空自衛隊においては、航空自衛隊装備品等整備規則及び航空自衛隊技術指令書管理運用規則等に基づき、被告主張のとおりの整備組織、整備方式が整えられていること、そして事故機についても、右整備方式のもとに、被告主張のとおりの定期修理、二五時間後及び五〇時間後の各定時飛行後点検が実施されていたこと、が認められる。また、こうした整備組織、整備方式がとられている以上、事故機について、右定期修理及び定時飛行後点検の外に、所定の飛行前点検、毎飛行の前後の点検及び基本飛行後点検が実施されたことも、推認するに難くないところである(但し、《証拠略》によっても、未だ、本件事故当時のF一〇四ジェット機の整備項目が別紙「F一〇四の各段階における点検・検査についての一覧表」記載の全項目にわたっていたものと認めることはできず、他にこれを認定するに足りる証拠もない。)
 しかしながら、前記四のとおり、本件事故機は、遅くとも離陸直後の時点から操縦不能に至るまでの間、その左チップタンクのスニフルバルブに不具合が存し、正常に機能しなかったこと、そのため、左右のチップタンクの残燃料に不均衡をきたし、本件事故を惹起したことが明らかである。
 このことに、前記整備組織、整備方式のもとにおいては、前記各整備実施当時、本件スニフルバルブに本件のような不具合が生じることを予見することが不可能であったことを窺わしめる具体的事実につき何らの主張・立証がないことをも併せ考えると、前記のとおりの整備の実施にもかかわらず、やはり、被告は、事故機ことにその左チップタンクのスニフルバルブにつき、その性能を保持し、整備、点検、修理等を実施すべき義務を充分には履行しなかったものといわざるを得ない。