全 情 報

ID番号 03266
事件名 賃金支払等仮処分申請事件
いわゆる事件名 兵庫県トラック協会事件
争点
事案概要  同僚の女子職員への傷害行為について起訴された労働者に対する起訴休職処分の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 休職 / 起訴休職 / 休職制度の効力
裁判年月日 1980年8月8日
裁判所名 神戸地
裁判形式 決定
事件番号 昭和55年 (ヨ) 316 
裁判結果 認容
出典 労働判例348号20頁/労経速報1067号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-起訴休職-休職制度の効力〕
 本件起訴は、職場内での傷害を公訴事実とするものであるから、職場外での事件を公訴事実とする場合に比較して職場秩序の混乱が生ずる可能性は高いと思われる。しかしながら本件休職処分は、あくまで起訴を理由とする休職処分であって懲戒処分ではないのであるから、職場秩序の混乱も、本件起訴に起因するものに限られなければならない。しかるに債務者の主張する職場秩序の混乱は、債権者が職場内で同僚に暴力を振ったからというものであって、本件起訴自体によるものではなく主張自体失当である。また債務者の主張が、右の傷害の事実が、わが国における有罪率の高さからみて、本件起訴により確実視されることになった結果職場に混乱が生じたということをいうものとしても、前記のとおり本件起訴にかかる公訴事実(以下単に「公訴事実」という)の内容は、昭和五四年四月六日の傷害ということであり、被害者も職員であり、現場付近には他の職員もいたのであるから、公訴事実についての職員の評価は、その時点で大方固まっていたものと思われ、約九カ月余たっての本件起訴の一事をもって、それが特段に変ったとは認め難い。ことに職場内で唯一の組合員という債権者の立場からみて本件起訴後債権者が引続き就労したとしても職場秩序が混乱するとは認め難く、何らこれを認めるに足りる証拠はない。
 (2) 対外的信用について
 債務者がある程度公的な業務を行っており、信用について一般の事業者に比べ注意を払わなければならないことは一応認められるが、公訴事実それ自体によっても、単に職場内で些細ないさかいがあって突いたところ倒れたというだけであって破廉恥罪などではなく、これをもって債務者の対外的信用を損うおそれは通常殆ど認められず、ことに債権者は、単なる一従業員にすぎないことを考慮すれば、特段の事情がない限り対外的信用を低下させるおそれはないというべきであって、右特段の事情を認めるに足りる証拠はない。
 3 そうすると、本件休職処分は、何ら合理的根拠なく、起訴されたことのみによって、債権者に休職を命令したものであるから、就業規則の解釈を誤ったものとして無効であると一応認められる。