全 情 報

ID番号 03279
事件名 従業員地位保全等仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 井関農機事件
争点
事案概要  組合支部の次期執行委員選挙に立候補する意思が固い組合活動家に対する松山から仙台への配転命令が、人事異動の必要に藉口して、組合支部の執行委員選挙に干渉したものと認められ、労組法七条三号の支配介入に該当し無効であり、右配転命令拒否を理由とする解雇も無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法623条
労働組合法7条3号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
裁判年月日 1979年1月25日
裁判所名 高松高
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ネ) 99 
昭和53年 (ネ) 127 
裁判結果 棄却
出典 労働判例316号71頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 そこで、本件転勤命令を検討するに、以上のとおり、一方で、会社は被控訴人の思想傾向及び組合活動を嫌悪していたこと、A課長らは命令のわずか約一ケ月前に被控訴人が組合支部執行委員に立候補するかどうかを確めたうえ、これを断念するよう再三の勧告をしていること、(人証略)によれば、かねて会社は組合支部との間で、執行委員以上の組合役員について組合の所属支部を異にする結果をもたらすような転勤はこれを行うことができないが、または少なくとも組合と協議のうえこれを行う旨の協定がなされており、若し被控訴人が次期の執行委員選挙に当選した場合には被控訴人を本件転勤のような所属支部を異にする地へ転勤させることは不可能であるか少なくともかなりの困難を伴うことになることが認められ、財務部の人事に関する立案の最高責任者であるB部長としては、右のように従業員の組合役員資格が人事異動と密接な関係があることから、被控訴人が組合支部から執行委員を罷免された経緯、A課長らの再三の勧告にもかかわらず、組合支部の次期執行委員選挙に立候補する意思が固いことなどについて、少なくともその概要を知っていたものと推認することができるし、また、前記執行委員罷免の経緯からすると、被控訴人に対し違法不当な転勤命令が発せられたとしても組合支部の支援は殆んど期待できない状態におかれ、しかも本件転勤命令が右選挙の直前に発令されていること等の事情があるのに反し、他方、会社の主張する本件転勤の理由には、その必要性、人選等に払拭しがたい疑問があるので、これらを総合して勘案すれば、本件転勤命令は、人事移動の必要に藉口して、被控訴人が積極的な組合活動に従事することを嫌悪し、被控訴人が再び組合支部執行委員になることによって、組合支部の運営並びに活動が一段と活発化することを妨害する意図のもとに、事実上組合支部執行委員選挙における被控訴人の立候補資格を剥奪して組合支部の執行委員選挙に干渉したものと認めるのが相当である。そうすると、本件転勤命令は、労働組合法七条三号の支配介入に該当することになり、その余の無効事由についての判断をまつまでもなく無効たるを免れない。