ID番号 | : | 03299 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | |
争点 | : | |
事案概要 | : | 起重機取扱作業につき、デッキマンに注意義務違反があったとして、使用者に対する損害賠償請求を認容した事例。 |
参照法条 | : | 民法715条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1979年4月27日 |
裁判所名 | : | 福岡地小倉支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ワ) 618 |
裁判結果 | : | 一部認容(確定) |
出典 | : | タイムズ395号88頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕 5 ところで被告会社は、巻上げ中の荷が落下することは希有なことではないから、本件事故は、ハッチ真下付近に身を乗り出した原告の一方的過失に起因する旨主張する。 しかしながら、デリック等を用いた船荷の積みおろしに際しては、船倉内に船内作業員が待機していることにかんがみ、何よりもまず使用者ひいてはウインチマン等の船外作業員に揚貨物落下の危険を防止する労働安全上の義務が存するといわねばならない。けだし、いかに船内作業員が安全と思われる場所に退避していたとしても、落下した荷は、その種類、形状、重量、高度、角度、落下地点等そのときの諸条件によっては不規則にバウンドし船内作業員に接触することも十分考えられるからである。さればこそ港湾荷役作業に関しては、労安則一六四条の五ないし同条の二二の規定が設けられ、この点の安全配慮義務を使用者に課しているのである。 これを本件に則していえば、艙口の寸法より長い原木を荷揚げする場合、前記認定のとおり原木を傾斜させるなどして巻上げねばならないのであるから、それだけ巻上げ中の荷くずれまたは原木がコーミング等に接触することの多くなることが予想され、したがってデッキマンとしては、たえず巻上げ中の原木の動静を注視し、できるだけ安全な位置を保持しながら巻上げるような各ウインチマンに適切な合図を送る注意義務があるといわねばならない。 しかして〈証拠〉によれば、原木がコーミングに接触しそうなときには、デッキマンにおいて直ちに「ヤマ」〈編注-ウインチマンの作業分担、デリックの操作担当〉担当のウインチマンに合図を送れば、原木がコーミングに接触するのを防ぎうることが認められる。 してみると、デッキマンAには、原木がコーミングにひっかかるまえに直ちに「ヤマ」担当のウインチマンに対し合図を送って原木がコーミングに接触するのを未然に防ぐか、または原木がコーミングにひっかかるのと同時に「ホンケ」〈編注-ウインチマンの作業分担、カーゴワイヤーを操作〉担当のウインチマンに巻上げ中止の合図を送って、ワイヤスリングの切断による原木の落下を防止すべき注意義務があるのに、これを怠った過失があるといわねばならない。 |